大学事典 「学納金返還請求訴訟」の解説
学納金返還請求訴訟
がくのうきんへんかんせいきゅうそしょう
一般に学生は大学に入学する以前に,入学金および当該年度の授業料等を納付する。しかし入学の意思決定を翻した場合,支払った学納金が返還されるのかをめぐってしばしば訴訟がおこされてきた。従来はいったん大学に支払った学納金は返還が認められないという地方裁判所の判決が一般的であった。しかし2001年(平成13)に消費者契約法が施行され,その後の判決に少なからず影響を与えているとみられる。2006年の最高裁判所判決は,学生が授業を受ける前に入学の意思を撤回した場合,大学には損害を与えないと解釈でき,大学は「授業料」を返還しなければならないとした。しかし「入学金」は,その支払いによって学生は入学しうる地位を得ているのだから,入学しなくても大学は返還義務を負う理由はないとした。授業料は授業に対する対価,その他の教育活動や施設の利用等を含めた学校教育サービス全体の使用料と取り扱われる。入学金は入学を許可するときに徴収されることから,入学事務手続きの手数料,または地位獲得のための契約金と解釈された。
著者: 丸山文裕
出典 平凡社「大学事典」大学事典について 情報