改訂新版 世界大百科事典 「宮房田」の意味・わかりやすい解説
宮房田 (きゅうぼうでん)
朝鮮の李朝時代,王子,王女など宮家(宮房)の需要や,宮家没後の祭祀経費に当てるため設定された田地。李朝では王室は国王との血縁・姻戚関係で田地を賜給していたが,豊臣秀吉の侵入(1592-98)による荒廃でそれが不可能となり,代償として荒れ地を免税地にして宮房に賜与した。宮房田には,土地の実効支配をする〈有土免税〉と収租権のみを所有する〈無土免税〉があった。土地管理は世襲の〈導掌〉が行い,のちにこれは権利として売買された。宮房田は買得,投托(荘園の寄進に当たる),占奪,開墾,罪人没収地分与によって増加した。免税地の増加は国家財政の基盤を揺るがし,宮房田の縮小・廃止が幾度も論議されたが,改革は実行できなかった。1894年の甲午改革で免税特権が廃止され,有土免税地は宮内府に移管されたが,日韓併合後,朝鮮土地調査事業で駅屯土などとともに国有地に編入された。
執筆者:吉田 光男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報