血族相互を結びつけるきずな。血縁は産み産まれた生物学的事実の存在そのものをいうのではなく,これを親子関係あるいはその連鎖として関係者が認知しなければ,当事者は血縁親族として認められない。他面,親子の生物学的関係がなくとも,契約によって親子と認知しあえば親族となり,契約上の血縁が成立する。また,血縁が単に推定上のものでも,関係者が認知しあえば親族となり,推定上の血縁が登場する。血縁成立には,生物学的関係とともに,あるいはそれ以上に,社会的認知が重要となる。推定上の血縁も前近代社会では大きな意義をもったが,現代社会では事実上の血縁および契約上の血縁が重要である。日本の慣行を東アジア諸国の慣行と比べるとき,契約上の血縁に与えた重要性に特色が見いだされよう。
血縁には上世代(先祖)あるいは,下世代(子孫)にたどって把握される直系親と,上世代にたどったのち自分のほうでない他の下世代へ降りることによって把握される傍系親とがある。個人には父方の先祖と母方の先祖が認知されるが,氏姓,権利,地位,財産などの承継について,どちらかがより重要であることが多い。父方の先祖からこれらが承継される社会(父系制),母方の先祖から承継される社会(母系制),双方から承継される社会などがある。日本では家の系統の観念を優先させたが,多くの場合,父方先祖から承継し,したがって父方の血縁が重きをなした。現代でも家の系統という考えが残存する一方,父方母方双方から何がしかずつ承継することが多く,双方の血縁があい並ぶ重要性をもつようになっている。
執筆者:森岡 清美
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報
「親子関係」filiationの連続としてたどることができる社会関係、いいかえれば「出生」に基づく関係をさし、「地縁」との対比においてもしばしば用いられている。ただし、ここでいう「親子関係」「出生」は、ともに社会的事実としてのそれであって、単に生物学的な事実と混同してはならない。たとえば、アフリカの父系部族の間では、しばしば婚約中の男が死亡すると、その婚約者に死者の親族男性と性的交渉をもたせ、生まれた子供を死者の子とする、亡霊婚ghost marriageの制度がみられる。また南スーダンのヌエル人の社会には、亡霊婚のほかに、女性が男性として結婚する形式もあり、「夫」である女性は、別の男性に頼んで妻に子を生ませ、自らがその子の「父」になる。いずれの場合においても「親子関係」は生物学的な意味での親子関係とは一致していない。血縁は、日本では、「血」ということばの使用からもうかがえるように、「血のつながり」といった形で、強い生物学的意味合いを込めて使用されており、分析概念としては適切ではないという意見もある。親族のつながりを「血」という擬似生物学的な隠喩(いんゆ)に訴えてとらえること自体、日本を含む一部の社会の文化特有の現象ともいえる。こういった難点を避けるため、社会的血縁、生物学的血縁の区別を明示する試みもあるが、やや煩瑣(はんさ)にすぎる難がある。
[濱本 満]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 平凡社「普及版 字通」普及版 字通について 情報
…日本の家も西欧のファミリーも,その基本的機能は成員の生活保障にある。だからこそ血縁者のみでなく,他人もいれる必要がでてくる。英語のファミリーfamilyの原義は家の使用人たちであった。…
…父母と子の関係を指すが,生みの親と子の血縁的な関係だけではなく,養親と養子,親分と子分,親方と子方の関係のように,法制上,習俗上親子関係が擬制される関係(擬制的親族関係)を指しても用いられる。
[親子と血縁]
親子関係では,とくに血のつながりという自然的要素が強調されるが,いずれの社会でも,血のつながりがあればただちに社会的にも親子関係が発生するとされているわけではない。…
※「血縁」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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