化学辞典 第2版 「密度はん関数法」の解説
密度はん関数法
ミツドハンカンスウホウ
density functional method
分子軌道法と同様,分子内の電子の運動に関するシュレーディンガーの波動方程式を解く方法論の一つ.「基底状態の電子エネルギーは,電子密度によって完全に記述される」というホーエンベルグ-コーンの定理にもとづく理論である.実現する電子密度分布はエネルギーを最小にする変分原理によって与えられる.これを実際に実行する方法として考えられたのが,コーン-シャム方程式である.しかし,電子密度とエネルギーを直接結びつける正確なはん関数が知られていないため,実際の計算では,電子間にはたらく電子相関交換相互作用を取り入れるのに近似的な電子密度はん関数を用いる場合が多く,これまで,多くの近似はん関数が提唱されている.密度はん関数法のもっとも大きな特徴は,ハートリー-フォック法と同程度の労力で,計算が実行できる点にある.そのため,生体分子のような大きな分子や材料化学にまで適用可能になっており,汎用のコンピュータープログラムであるGaussianシリーズにも,近年は密度はん関数法が組み込まれている.なお,1998年のノーベル化学賞は,密度はん関数理論の業績によるW. Kohn(コーン)と,Gaussianシリーズを開発したJ.A. Pople(ポープル)に与えられた.
出典 森北出版「化学辞典(第2版)」化学辞典 第2版について 情報