小椋(読み)おぐら

改訂新版 世界大百科事典 「小椋」の意味・わかりやすい解説

小椋 (おぐら)

滋賀県東近江市の愛知(えち)川上流に沿う渓谷一帯(旧,愛知郡東小椋村)の地名。各地に散在する木地屋の根元の地と考えられていた所である。この地の君ヶ畑(きみがはた),蛭谷(ひるたに),箕川(みのかわ),政所(まんどころ),九居瀬(くいぜ),黄和田(きわだ)の6集落は,小椋谷六ヶ畑とも呼ばれた。中でも君ヶ畑,蛭谷2村には,双方に惟喬(これたか)親王墳墓と伝えられるものや,親王祭神とした神社(旧称,太皇(おおきみ)大明神,筒井八幡宮)とその別当寺(金竜寺,帰雲庵)が存在する。それは惟喬親王が当地に流寓してろくろを発明したことをいう,木地屋の職の本縁譚を記した縁起を伝えたからである。この谷が小野宮とも呼ばれた惟喬親王と結びつきをもったのは中世のことで,小野神を守護神とした時宗の聖の関与があったとも考えられる。そのような事情から,小椋谷は〈木地屋根元地〉であるという考えが形成された。このようなことを背景に画策された,諸国の木地屋の座的統制を〈氏子狩(うじこがり)〉という。現在全国各地に広く分布するオグラやそれに関連する地名や姓は,ほとんどが上記伝承に結びつくものであるといっても過言ではない。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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