神宮寺の一種で,神社の境内に建立され,供僧が祭祀・読経・加持祈禱をする一方,神社の管理経営を行った寺。本地垂迹の説が唱えられ,神仏習合思想が成立するにいたり,神社では仏教による祭祀が盛んに行われた。神宮寺の群立はその一斑であるが,そのなかでも別当寺と称されるものは,神社の祭祀や管理などの支配権をもった寺で,一般の神宮寺とは判然と区別される。《延喜式》に〈諸寺は別当を長官とし,三綱を以て之を任用する〉と示しているように,大寺の最高の管理者が別当といわれ,別当に補任された僧侶が止住し,運営指導に当たっていた寺が別当寺ということになる。別当寺の設けられた神社は格式のある神社で,石清水(いわしみず)八幡宮の護国寺,平野神社の観音寺(のち施無畏寺),北野神社の北野寺,多武峯(とうのみね)の妙楽寺,八坂神社の感神院が別当寺として有名であった。その他,地方の諸社にも多くの別当寺があったが,1868年(明治1)神仏分離により堂塔伽藍や仏像などは廃棄され,昔日の姿をとどめるものはない。
→神宮寺
執筆者:堀池 春峰
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