少も(読み)すこしも

精選版 日本国語大辞典 「少も」の意味・読み・例文・類語

すこし【少】 も

(副詞「すこし」に係助詞「も」の付いたもの)
① (肯定の表現とともに用いて) わずかでも。わずかながら。
※竹取(9C末‐10C初)「世中に多かる人をだに、すこしもかたちよしと聞きては、見まほしうする人どもなりければ」
平家(13C前)一一「いますこしも日数ののぶるをうれしき事におもはれけり」
② (否定の表現とともに用いて) その程度、度合が零であることを示して、否定の気持を強める。全然。ちっとも。
今昔(1120頃か)一二「少(すこし)も不足ずと云ふ事无くして叶へり」
徒然草(1331頃)一九四「達人の人を見る眼は少しも誤る所あるべからず」
※悲しき玩具(1912)〈石川啄木〉「今までのことを、みな嘘にしてみれど、心すこしも慰まざりき」
[語誌](1)中古では「すこし‐も」の意識で「すこし」を強めたものであったため、和文脈ではおおむね肯定形にかかる①の用法が主であった。
(2)中古後期の「今昔物語集」などにおいて、肯定形と否定形とに相半ばしてかかるようになり、中世になると一般に否定形にかかる②の用法が主になる。特に、説話文学において、常套的な強調表現の一種として用いられたものが、一般の口頭語にまで広がったものと思われる。

すくなく‐も【少も】

〘副〙 (形容詞「すくない」の連用形助詞「も」が付いてできたもの)
① (下に打消や反語表現を伴って) すこしばかり…ではない。いくらすくなく見ても…などというものではなく、大いに。非常に…だ。
万葉(8C後)一〇・二一九八「風吹けば黄葉(もみち)散りつつ小雲(すくなくも)吾の松原清からなくに〈作者未詳〉」
※万葉(8C後)一五・三七四三「旅と云へば言(こと)にそ易き須久奈久毛(スクナクモ)妹に恋ひつつ術(すべ)無けなくに」
② (下に打消を伴わないで、肯定表現、希望表現などで結ばれる。新しいいい方) 控え目に見ても。最小限であっても。すくなくとも。
※尋常小学読本(1887)〈文部省緒言「少くも今より四年間以上、此書を行ひ、一度此書を用ひ始めたるの後は」

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

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