山名郡(読み)やまなぐん

日本歴史地名大系 「山名郡」の解説

山名郡
やまなぐん

遠江国の南端部中央に位置した古代から近世の郡。南は遠州灘に面し、郡内を東西東海道が走る。なお「掛川誌稿」は「山名は山無なり、山梨より南は平坦にして、山無し、故に古記古図などには、月見里と書て、山なしとよみたり」と山名の由来を地形から説明している。

〔古代〕

郡名は「和名抄」東急本国郡部に「也末奈」の訓がある。古代の郡域は現袋井市・浅羽あさば町一帯に比定される。古墳時代には太田おおた川とさか川の合流点付近を中心に四世紀から五世紀の有力古墳を筆頭とする大古墳群が形成されている。「先代旧事本紀」天孫本紀には久努直の名がみえ、現袋井市久能くのは久努(くの)にちなむ地名という。「国造本紀」には久努国造について「筑紫香椎朝の代、物部連の祖伊香色命の孫印播足尼を以て国造と定め賜ふ」(原漢文)とあるなど、久努地域を本拠とする豪族が早くからヤマト政権との関係を結んでいた。郡としては養老六年(七二二)佐益さや(佐野郡)八郷を割いて山名郡を設置したことに始まる(「続日本紀」同年二月一六日条)。平城宮跡出土木簡(「平城宮木簡」一―三五八)に天平一七年(七四五)年紀とともに「遠江国山名郡進上中男作物堅魚十斤」、同出土木簡(同書四―三九九五)に「遠江国山(名カ)」とみえる。

出典 平凡社「日本歴史地名大系」日本歴史地名大系について 情報

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