嶺南摭怪(読み)れいなんせきかい

改訂新版 世界大百科事典 「嶺南摭怪」の意味・わかりやすい解説

嶺南摭怪 (れいなんせきかい)

ベトナムの古説話集。14世紀末に当時京北道監察御史で《越鑑通考》の著者ブークインVu Quynh(武瓊。1452-97)が,13世紀半ばに成ったチャン・テ・ファップTran The Phap(陳世法)の説話集を校訂,修成したもので,1492年のブー・クインの序と,翌93年のキエウ・フー(喬富)の序を付したおよそ42伝を内容とする数種の写本で伝わる。チャン・テ・ファップについてはソンタイ(山西。ベトナム北部)の人という以外に詳しいことはわからない。チャン・テ・ファップの説話集はもと22伝で,〈鴻厖伝〉などの民族の発祥や伝統風俗の由来,地名起源に関する神話や伝説と,〈二徴伝〉のように歴史上の人物についての伝承を文字にした物語を集め,ほかにチャン朝裕宗の没後に起こった恭靖王(芸宗)によるズオン・ニャット・レ(楊日礼)廃帝事件とかかわりがある〈烏雷伝〉のように,編者の同時代の事件に取材した話なども含まれる。写本で伝わる42伝の半ばは後世に増補されたもので,そのほとんどは《越甸幽霊集(えつでんゆうれいしゆう)》の内容と重複するほか,〈越井伝〉など中国の小説などを潤色した話もある。ベトナムの伝承説話の最古の貴重な資料で,正史大越史記全書》とのかかわりも深い。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報

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