正史(読み)セイシ(その他表記)Zhèng shǐ

デジタル大辞泉 「正史」の意味・読み・例文・類語

せい‐し【正史】

国家などが編纂した歴史。→外史がいし
中国で、最も正統と認められた、古代から明代の各時代の紀伝体歴史書。南宋時代には十七史、明代には二十一史、清代には二十二史二十四史が認められた。また、二十五史とする数え方もある。

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精選版 日本国語大辞典 「正史」の意味・読み・例文・類語

せい‐し【正史】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 正当なものとして国家的に認められた歴史書。また、国家として編修した歴史。
    1. [初出の実例]「さもない事をばいかに遷史を補へばとて、詐りを正史に容れうず事ではないぞ」(出典:史記抄(1477)九)
    2. 「何事にても正史実録になき事は信用しがたき事なれども」(出典:随筆・貞丈雑記(1784頃)一六)
    3. [その他の文献]〔隋書‐経籍志二〕
  3. 中国、古代から明まで各時代の、もっとも正統と認められた紀伝体の歴史書。清の乾隆(けんりゅう)帝時代以来、「史記」から「明史」までを「二十四史」、それに後の一九二一年に「新元史」を加えたものを「二十五史」という。

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改訂新版 世界大百科事典 「正史」の意味・わかりやすい解説

正史 (せいし)
Zhèng shǐ

中国,各王朝歴史叙述として公認された紀伝体の歴史書。現在24もしくは25あり二十四史,二十五史とも呼ばれる。正史の呼称は《隋書》経籍志に始まり,《史記》以前の編年体の史書を古史というのに対して使われた。10世紀以後,政府によって公認された特定の史書に正史の名が冠せられ,司馬遷の《史記》にはじまり欧陽修の《五代史記》に至る歴代17種の紀伝体歴史書を十七史とした。正史の数は時代が下るにつれ増え,明代二十一史,清では二十二史となったが,乾隆以後,《旧五代史》《旧唐書》を加えて二十四史,1922年大総統徐世昌は柯劭忞(かしようびん)の《新元史》を入れて二十五史とした。最近の中国では《清史稿》も正史に準じて扱っている。なお《史記》《漢書》《後漢書》《三国志》を前四史,遼,金,元の三史を後三史と呼ぶ。正史はすべて紀伝体であるが,付表のように表と志を欠くものも少なくない。また《後漢書》の志は晋の司馬彪(しばひよう)(?-306ころ)の《続漢書》の志,《隋書》のそれは唐の長孫無忌(?-659)の《五代史志》で補われている。また《史記》と《南史》《北史》が通史であるほかは,すべて断代史である。

 司馬遷の《史記》や班固の《漢書》など唐以前の正史には,史官の地位にあった一代の学者が,畢生の著作としてあらわしたものが多く,生の材料を使い,優れた史観と一貫した記述を行っている。唐・宋以後の正史はこれに対して,王朝の文化事業の一つとして作られる性格が強く,多人数による短時日の編纂のため粗漏や不統一を免れない。唐・宋以後は,朝廷に歴史編纂所が体系的に設けられた。皇帝の言動記録〈起居注〉,宰相の政務記録〈時政記〉などを中心に〈日暦〉〈会要〉などの公的記録が作られ,それらを合わせて一皇帝がなくなると編年体の〈実録〉ができる。次に幾人かの皇帝の実録がまとめられて紀伝体の〈国史〉が編纂される。そして一王朝が滅びると次の王朝のはじめに,前朝の政治の得失を明らかにするため,〈国史〉をまとめて〈正史〉が誕生する。欧陽修の個人著作《五代史記》(《新五代史》)を除き,《唐書》以下の正史はこうしてできており,宰相が名目的な編纂者となるのが通例だった。南北朝以前の史料は正史によってのみ書き残されているものが多いのに対し,とくに宋代よりあとは,印刷術の普及とも関係して数多くの根本史料が伝わっており,正史の価値は相対的に下落する。しかし,専門に旧中国のことを研究する者にとって第一の材料である点はまちがいなく,人民共和国でも句読点を打った活字の標点本二十四史を刊行している。

 なお唐の顔師古の《漢書注》をはじめ,前四史にはとくに優れた数多くの注釈があり,また銭大昕(せんたいきん),王鳴盛をはじめとした清朝の考証学者たちによって,徹底した本文校訂なども行われている(《廿二史考異》《十七史商榷》など)。さらに,表,志を欠く正史については,その増補がこまかく試みられ《二十五史補篇》として集成されている。2000年の長期間,歴代各王朝の史実が詳しく知りうるのは正史の存在に負うもので,歴史を何よりも重視した中国の特質がここに凝集している。
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百科事典マイペディア 「正史」の意味・わかりやすい解説

正史【せいし】

中国歴代の歴史書のうち,紀伝体で記され,もっとも正統と認められたもの。編年史,雑史,稗史(はいし)に対する。唐朝から後は勅命によって前王朝の正史を編修。現在まで25史がある。宋代には十七史,明代に二十一史,清代に二十四史となり,中華民国には《新元史》を加え二十五史となった。ほかに,正史に列せられない〈清史稿〉がある。現在,中華人民共和国で国家プロジェクトとして清史編纂事業が進められている。次に歴代正史を列挙する。1.《史記》(130巻,前漢,司馬遷の撰,以下同じ),2.《漢書》(100巻,後漢,班固),3.《後漢書》(120巻,宋,范曄(はんよう)),4.《三国志》(65巻,晋,陳寿),以上を〈前四史〉という。5.《晋書》(130巻,唐,房玄齢等),6.《宋書》(100巻,梁,沈約),7.《南斉書》(59巻,梁,蕭子顕),8.《梁書》(56巻,唐,姚思廉(ようしれん)),9.《陳書》(36巻,唐,姚思廉),10.《魏書》(130巻,北斉,魏収),11.《北斉書》(50巻,唐,李百薬),12.《周書》(50巻,唐,令狐徳【ふん】(れいことくふん)),13.《隋書》(85巻,唐,魏徴),14.《南史》(80巻,唐,李延寿),15.《北史》(100巻,唐,李延寿),16.《旧唐書》(200巻,後晋,劉【く】(りゅうく)等),17.《新唐書》(225巻,宋,欧陽修等),18.《旧五代史》(150巻,宋,薛(せつ)居正),19.《新五代史》(75巻,宋,欧陽修),以上,16,18を除いて〈十七史〉という。20.《宋史》(496巻,元,脱脱等),21.《遼史》(116巻,元,脱脱等),22.《金史》(135巻,元,脱脱等),23.《元史》(210巻,明,宋濂等),以上,16,18を除いて〈二十一史〉という。24.《明史》(332巻,清,張廷玉等),以上を〈二十四史〉という。25.《新元史》(257巻,民国,柯劭【びん】(かしょうびん))。
→関連項目三国史記

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普及版 字通 「正史」の読み・字形・画数・意味

【正史】せいし

紀伝体の史書。二十五史。〔隋書、経籍志二〕是より世り。皆班(固、漢書)・馬(司馬遷、史記)に擬して、以て正を爲(つく)る。作尤も廣し。一代の、數十家に至る。~今、世代に依り、聚めて之れをし、以て正に備ふ。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「正史」の意味・わかりやすい解説

正史
せいし

中国の史書でもっとも権威ありと認められたもの25部をいう。その体裁は紀伝体といい、天子治世の年代記である本紀と、著名な個人の事績を記した列伝との2部分を不可欠の要素とする。ほかに年表、系譜、あるいは制度を記した志(または書)などを含むものがあるが、これらは必須(ひっす)の条件ではない。正史は漢の司馬遷(しばせん)が上古から漢の武帝(ぶてい)時代までを記した『史記』に始まり、以下は断代史となり、1王朝ごとに1部の史書がつくられ、班固(はんこ)の『前漢書』、范曄(はんよう)の『後漢書(ごかんじょ)』、陳寿(ちんじゅ)の『三国志』があり、以上をあわせて四史と称する。以後の王朝について『晋(しん)書』『宋(そう)書』『南斉(なんせい)書』『梁(りょう)書』『陳書』『魏(ぎ)書』『北斉書』『周書』『隋(ずい)書』『新唐書』『新五代史』ができ、南宋時代になって以上のほかに『南史』『北史』を加え、十七史と総称した。元代の末に『宋史』『遼(りょう)史』『金史』が著され、明(みん)初に『元史』が成立したので、これをあわせて二十一史、清(しん)初にさらに『明史』ができたのであわせて二十二史の名が生じた。清の王鳴盛(おうめいせい)の『十七史商搉(しょうかく)』、趙翼(ちょうよく)の『二十二史箚記(さっき)』などの書名は、これに由来する。乾隆(けんりゅう)帝はさらに『旧唐書(くとうじょ)』と『旧五代史』をこれに加えて二十四史とし、宮中の武英殿で印行した。全部で324巻に上る。民国の初め、柯劭忞(かしょうびん)の『新元史』が出ると大総統令によって正史に加えられ二十五史となった。清朝については民国初めに『清史稿』が現れたが、まだ正史として権威ある「清史」は現れていない。

[宮崎市定]


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山川 世界史小辞典 改訂新版 「正史」の解説

正史(せいし)

中国の古代から明までの各時代について,最も正統と認められた紀伝体の歴史書。初めは私撰であったが,唐以後は勅命により前王朝の正史を編纂することになった。『史記』『漢書』『後漢書』『三国志』『晋書』『宋書』『南斉書』『梁書』『陳書』『魏書』『北斉書』『周書』『隋書』『南史』『北史』『旧唐書』(くとうじょ)『新唐書』『旧五代史』『新五代史』『宋史』『遼史』『金史』『元史』『新元史』『明史』の25種があり,総括して「二十五史」と称する。『新元史』を除いて「二十四史」といい,他に「十七史」「二十一史」「二十二史」「二十三史」という数え方がある。『史記』以下の4種を特に「前四史」という。

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旺文社世界史事典 三訂版 「正史」の解説

正史
せいし

中国の古代から明までの歴代王朝が,それぞれ前王朝の歴史書として公認した紀伝体の歴史書
『史記』『漢書』『後漢書』『三国志』『晋書』『宋書』『南斉 (なんせい) 書』『梁 (りよう) 書』『陳書』『魏書』『北斉書』『周書』『隋書』『南史』『北史』『新唐書』『新五代史』を17史,これに『宋史』『遼史』『金史』『元史』を加えて21史,『明史』を加えて22史,『旧唐書 (くとうじよ) 』『旧五代史』を加えて24史,さらに『新元史』を加えて25史という。清朝については,『清史稿』がつくられ,最近では正史に準じた扱いを受けている。

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とっさの日本語便利帳 「正史」の解説

正史

中国の史書は、本紀・列伝による人物と事跡を主に記述した紀伝体と、年月の順を追って記述した編年体とに大別される。紀伝体の史書は『史記』以後は各王朝ごとの断代史として編纂されており(唐代以降に編纂のものは官選)、『史記』以下『明史』までの二五史を正史とする。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「正史」の意味・わかりやすい解説

正史
せいし

二十四史」のページをご覧ください。

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