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差動歯車装置 さどうはぐるまそうちdifferential gear

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

差動歯車装置
さどうはぐるまそうち
differential gear

2つの歯車軸を駆動したとき,それらの作用を同時に受けて第3の歯車軸が回転するような歯車装置。遊星歯車装置が用いられる。自動車後軸の駆動装置は,この装置を応用したもので,傘歯車を用いた遊星歯車装置である。 図において,推進軸Sの回転はA歯車よりB歯車に伝達され,さらにB歯車のフレームFに取付けられた歯車Cを介して,最終的にDとEの歯車を駆動する。DとEの歯車軸L,Rの先端には車輪がある。直進するときは,歯車C,D,EはFに対して静止し,DとEはBと同一速度で回転する。いま,左へ旋回する場合には,D歯車の回転数はE歯車の回転数より減少しなければならないが,DとE歯車の平均回転数は一定で,B歯車の回転数は変ることがない。右旋回の場合も同様である。

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大辞林 第三版の解説

さどうはぐるまそうち【差動歯車装置】

二つ以上の運動の差または和を一つの運動にして出力する歯車装置。遊星歯車装置などを応用する。自動車ではカーブを曲がるとき、左右の駆動輪の回転数とトルクの差を吸収してスムーズに走るために用いる。ディファレンシャル-ギア。デフ。

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

差動歯車装置
さどうはぐるまそうち
differential gear mechanism

歯車伝動装置の一種。単に差動歯車ともいう。遊星歯車装置において、太陽歯車軸、遊星歯車軸、およびその二つを結ぶリンクのうち、いずれか二つに運動を与えると、他の一つは両者の運動を同時に受けて回転する。このような装置を差動歯車装置という。互いにかみ合う二つの歯車A、Bの軸を腕Cで連結し、歯車Aは動かさずに腕CをA歯車を中心にして回転させると、歯車Bは自転しながら歯車Aの周りを公転する(図A)。これが遊星歯車装置で、歯車Aを太陽歯車、歯車Bを遊星歯車という。[中山秀太郎]

原理

歯車Aを固定し、歯車Bを歯車Aの周りに時計と反対方向に1回転したとき、歯車Bは何回転するであろうか。反時計方向をプラス(+)とし、時計方向をマイナス(-)として考えてみよう。腕Cが反時計方向に1回転したときには+1と書く。最初にこの装置全体を固定し、歯車Aの中心O1の周りに全体を反時計方向に1回転する。すなわちA、B、Cはすべて+1である。次に腕Cを固定し、歯車Aを時計方向に1回転し初めの状態に戻す。このときAは-1である。Aが1回転すると、Aにかみ合っている歯車Bは中心O2の周りに回転する。歯車Aの歯数をZA、歯車Bの歯数をZBとすると、Aの1回転によりBはZA/ZB回転する。そして歯車Bの回転方向は反時計方向である。すなわち+ZA/ZBとなる。全体を固定したときと、腕を固定したときのそれぞれの歯車の回転を加え合わせれば、歯車Bの回転数が求められる。
 歯車Aを固定して考えたが、Aにも回転を与えたとすると、歯車Bは歯車Aと腕Cの二つの影響を受ける。このようにしたものが差動歯車である。このときの各歯車の回転数も以上と同じ方法で求めることができる。歯車A、B、腕Cの回転数をそれぞれNANBNCとし、歯車A、Bの歯数をそれぞれZAZBとしたとき、回転数の計算は図Aの表に示すとおりである。[中山秀太郎]

応用例

差動歯車装置の応用例は、自動車に使われているディファレンシャル・ギヤである。その作動原理を説明しよう(図B)。平歯車Dの中にベベルギヤ(傘(かさ)歯車)Bが取り付けられている。Bの軸は平歯車Dの軸に垂直である。このBに別のベベルギヤA、Cがかみ合っている装置を考えてみる。なおA、Cの軸は平歯車Dの軸には固定されていない。
 この装置で平歯車Dを静止させておいてベベルギヤAを回転させると、これにかみ合っているベベルギヤBが回転し、さらにBとかみ合っているCも回転する。このときAの回転数とCの回転数とは同じであるが、回転方向は逆になる。Aを同一方向に一定回転させておいて平歯車Dを回転させると、ベベルギヤBは自転しながら歯車Dの中心の周りに回転するので、歯車Cを左右どちらの方向にもいろいろな速さで回転させられる。また静止させることもできる。この平歯車Dをベベルギヤとしたものが、自動車に使用されている差動歯車装置である。
 エンジンの回転はベベルギヤEによりDに伝わる。Dの軸に垂直に2個のベベルギヤB、B′があり、B、B′によりベベルギヤA、Cに回転が伝わる。A、Cの軸に車輪がついている。直進のときはDの回転はベベルギヤB、B′を介してA、Cに伝わる。このときB、B′は自分の軸の周りには回転しない。自動車が曲がるときにはベベルギヤB、B′は公転と自転をし、外側の車輪についている軸Aを速く、内側の車輪についている軸Cを遅く回転させるので、自動車の車輪はスリップすることなくカーブを曲がることができる。[中山秀太郎]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典内の差動歯車装置の言及

【差動装置】より

…2種以上の機械部品のそれぞれの運動の差,または和を取り出して一つの部分を動かす装置。一般には順次にかみ合う複数個の歯車の中心を,リンクなどで固定連結した差動歯車装置differential gearを指すことが多い。一般に,この差動歯車装置の一つの歯車とリンクにそれぞれ回転を与えると,他の歯車の運動はすべて定まる。…

※「差動歯車装置」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社日立ソリューションズ・クリエイト世界大百科事典 第2版について | 情報

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