改訂新版 世界大百科事典 「年季契約移民」の意味・わかりやすい解説
年季契約移民 (ねんきけいやくいみん)
indentured servant
17~18世紀,ヨーロッパから北アメリカのイギリス領植民地へ渡った移民で,到着後一定期間の不自由労働を義務づけられた者。ニューイングランド以外の北アメリカ植民地への渡航者の半数以上を占める重要な労働力源であった。これには次の3種類がある。(1)船賃後払い渡航者,(2)被誘拐者と強制的国外追放者,(3)罪人。(1)はアメリカへの渡航費を到着後支払った地主・農民のもとで,3~5年間労役に服して渡航費を返済する制度で,ドイツ人の場合これが最も多く,イギリス人やスコットランド人もこの方法で移民した者が多い。(2)は(1)のように自由意志ではなく,誘惑や公然たる誘拐によって船に乗せられた者,または国外追放の判決をうけた者で,到着後一定の契約期間(ふつう7年間)労役に服した。(3)は西インド諸島とメリーランドに多かった。一般に契約期間中は食料・衣服と住居が与えられ,年季明けには小さな土地と銃と農具が支給された。17世紀には南部植民地に多く,その数は黒人奴隷を上回った。18世紀には中部植民地に多かった。待遇は千差万別で,逃亡者はつかまると主人に強制返還され,契約期間が延長された。
執筆者:富田 虎男
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報