日本大百科全書(ニッポニカ) 「メリーランド」の意味・わかりやすい解説
メリーランド
めりーらんど
Maryland
アメリカ合衆国東部の州。面積2万7394平方キロメートル、人口529万6486(2000)。北はペンシルベニア州、東はデラウェア州、南はポトマック川を境界にしてバージニア州、西はウェスト・バージニア州に接し、東部にはチェサピーク湾が深く入り込んでいる。独立13州の一つ。州都アナポリス。地形的にはボルティモアとワシントンDCを通るフォール・ライン(滝線)を境界にして、東部の海岸平野と西部のピードモント・アパラチア山地に分けられる。東部の海岸にはチェサピーク湾の多くの入り江がある。気候は東部では海洋性で湿潤・温暖であるが、西部ではすこし大陸性気候の影響を受け、冬の気温が下がる。チェサピーク湾の奥に位置するボルティモアの年降水量は1500ミリメートル、平均気温は1月で0.6℃、7月で25℃である。チェサピーク湾岸では漁業が盛んで、とくにカキの養殖が有名である。18世紀にチェサピーク湾岸の港で行われていた木造船の建造は、その後、大規模な造船業に発達した。そのほかにも、金属、食品加工、輸送用機器、電気機械、精油、化学製品、衣服、出版・印刷などの多様な工業が発達している。工業は州経済の第一の部門であるが、ブロイラー、肉牛の飼育や、トウモロコシ、タバコ、大豆、野菜栽培などの農業も盛んである。
1631年にチェサピーク湾のケント島に最初の定住集落として毛皮交易所が建設された。1634年にイギリス人によってセント・メリーズに植民地が建設され、その後、開拓地が西に拡大した。18世紀前半までに植民地経済の中心はプランテーションによるタバコ栽培となり、多数の奴隷も輸入された。南北戦争時には奴隷州にもかかわらず北軍に属したが、南北の境界に位置していたので州民は両軍に分かれて戦った。現在も当時の激戦地跡が多く残っている。
[菅野峰明]