日本大百科全書(ニッポニカ) 「年期婿」の意味・わかりやすい解説
年期婿
ねんきむこ
結婚後一定期間、夫が妻方に入って働き、その後、妻子を連れて自家に帰る婚姻方式。三年婿、五年婿、出帰り婿、手間とり婿などともいい、東北地方の各地にみられた。形式的には婿入り婚の古態と一致するけれども、実際は娘の労働力をすこしでも長く実家にとどめ置こうとするとともに、嫁に出すことによって生ずる労力不足の補償を求めて案出された「労役婚」といえる。それは東北地方の特殊な大農経営による所産であり、姉家督(あねかとく)の慣行とも成立の基盤を同じくする。やがて、長男が幼少な場合に限るとか、住み込んでしまわずに夜だけ妻問(つまど)いするとか、1年の特定時期だけ労力を提供するとか、さまざまな変異を示しながら消滅していった。
[竹田 旦]