日本大百科全書(ニッポニカ) 「弥生(陰暦3月の異称)」の意味・わかりやすい解説
弥生(陰暦3月の異称)
やよい
陰暦3月の異称。陽暦の3月末から4月末にあたる。晩春の候で、花見月、桜月などともいい、このころの山をさして「弥生山」の称があるほか、ホトトギスの異称「弥生過鳥(やよいすごどり)」、行く春を惜しむ「弥生尽(やよいじん)」などの語がある。この月の3日は雛(ひな)の節句で「弥生の節句」の名でよび、歌舞伎(かぶき)ではこの月に上演する狂言を「弥生狂言」といい、江戸時代中期以降は、3月3日を初日とするのを例とするようになり、「三の替わり」の称もある。語源については、この月になると、春になって萌(も)え出た草々がいよいよ成長するので、「いやおひ(弥生)月」というのだとする『奥義抄(おうぎしょう)』や『日本釈名』などの説のほか、草木が「ややおひ(漸々成長)」する月だからなどとする説がある。
[宇田敏彦]