改訂新版 世界大百科事典 「弾道軌道」の意味・わかりやすい解説
弾道軌道 (だんどうきどう)
ballistic trajectory
地球周辺の軌道に対しては,楕円軌道の近地点が地球半径の内側にあって,その軌道が地表面では放物線弧の一部に見える軌道をいう。広義には,自由飛行の場合の経路全体を意味しており,恒常的な推進機関をもたない惑星間探査機が目的惑星に遭遇するための経路を示す場合もある。小型観測ロケットや大陸間弾道ミサイル(ICBM),中距離弾道ミサイル(IRBM)の軌道はいずれもこれに属する。弾道軌道は必要速度が小さく小型ロケットで十分実現でき,短時間の宇宙飛行実験や観測に適している。日本においても,無重量状態における金属材料製造実験や,X線天体,太陽活動の観測などに積極的に利用されている。マーキュリー計画などの有人宇宙船の初期開発当時には,このような軌道によって試験が繰り返された。
執筆者:松尾 弘毅
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報