御殿御茶屋(読み)ごてんおちゃや

改訂新版 世界大百科事典 「御殿御茶屋」の意味・わかりやすい解説

御殿・御茶屋 (ごてんおちゃや)

戦国時代末期から江戸時代にかけて,織田信長豊臣秀吉,徳川家康以下の各将軍や諸大名の城郭内,あるいは彼らの交通休泊に供するために設けられた殿舎,別邸をいう。御殿とは元来,天皇の清涼殿などをさし,後には貴族や大名・社寺の殿舎をふくめていうようになったが,各時代の殿舎構成は,古代は寝殿,中世は主殿,近世書院中核としていた。一方,御茶屋は戦国大名などが領内を巡歴,遊猟する途次,休憩して茶の湯を興行する茶亭にはじまり,江戸時代には大名の参勤交代時の休泊所としても利用された。御旅屋,御仮屋なども同様である。これらは,将軍や大名などの直営で,その施設は同一郭内に設けられて,完全な区別が難しい例もみられる。御殿・御茶屋は,東海道宿駅などでは江戸時代中期までには廃止されて民間の本陣などに休泊機能を移行させたが,脇街道の宿駅では幕末期まで藩営の御茶屋として,本陣同様の役割を果たすものが多かった。
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出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報