志怪(読み)シカイ(その他表記)Zhi-guai

デジタル大辞泉 「志怪」の意味・読み・例文・類語

し‐かい〔‐クワイ〕【志怪】

中国六朝時代に、怪異に関する話を記録した短編小説類。「捜神記」など。

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「志怪」の意味・わかりやすい解説

志怪
しかい
Zhi-guai

(1) 中国,六朝時代の小説の一形態。「志」は「誌」と同じで,志怪とは「怪を誌 (しる) す」意。怪奇な出来事,超現実的な霊威の働きなどの記録をさし,六朝時代に大いに流行し,仏教説話道教説話,民間伝説などさまざまな説話を含む。いずれも作者が構成を考えて展開してみせるのではなく,起ったと伝えられる事件そのものを記すという形をとっている。当時知識人の間の対話のなかから珍しい話を集めて成立したと考えられ,作者 (記録者) も真偽諸説はあるが,『捜神記』の干宝,『博物志』の張華,『続捜神記』の陶潜 (→陶淵明) ,『列異伝』の曹丕 (→文帝) など歴史家,学者,文学者から帝王にまで及ぶ当時の一流の知識人が含まれる。中国の小説の源流で,直接的には次の唐代の「伝奇」小説につながるとともに,そこに含まれる説話は後世の小説,戯曲に多くの素材を提供した。 (2) 中国,六朝志怪小説の名。『志怪』と題する書物は,著者の異なる5種類があったと伝えられるが,いずれも原書は失われ,いちばん多い晋の祖台之 (そだいし) 著の書で 15条,少いものではただ1条が,『太平広記』『太平御覧』『初学記』などの書に引用されて残っている。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「志怪」の意味・わかりやすい解説

志怪
しかい

中国、六朝(りくちょう)時代にもっとも盛んに記録された説話の名称。「怪を志(誌)(しる)したもの」という意味の命名で、この種の話には怪奇な内容をもつものが多いところから、近代中国の文学史家によって名づけられたものである。志怪小説ともよばれ、特異な人物の事跡を記録した志人小説という説話群と相対する説話群の呼称でもある。六朝も早期の三国・晋(しん)のころの志怪には、昔話や伝説など、民間伝承の記録とみられるものが多いが、劉宋(りゅうそう)以降、六朝期後半の志怪書には、仏教や道教の功徳(くどく)を説く宗教説話がしだいに数を増してくる。しかし今日原形をとどめる志怪書は1本もなく、いずれも後人が『太平広記(たいへいこうき)』や『太平御覧(たいへいぎょらん)』などの類書に引かれ残っていた六朝志怪書の断片を拾い集めて作り直したようなものばかりである。また原話の筆録に忠実でなく、話の骨子だけを記したようなものも多い。

[高橋 稔]

『高橋稔・西岡晴彦訳『中国の古典32 六朝・唐小説集』(1982・学習研究社)』

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普及版 字通 「志怪」の読み・字形・画数・意味

【志怪】しかい(くわい)

ふしぎなことをしるす。〔荘子、逍遥遊〕齊諧(せいかい)なるは、怪を志(しる)すなり。

字通「志」の項目を見る

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世界大百科事典(旧版)内の志怪の言及

【怪談】より

…これらのうち,鬼怪が代表的な怪談となる。怪異を語り,または記録したものを,古くは〈志怪〉とよび,宋代では〈霊怪〉とよんで講談の題材にもなっていた。近世では《剪灯新話》《聊斎志異》《子不語》などは,これらの怪異談を多く載せた記録または小説作品で,《剪灯新話》の《牡丹灯記》が日本の怪談《牡丹灯籠》の原話となったような例もある。…

【志怪小説】より

…中国,魏晋南北朝時代の,超自然の現象や幽霊・化物にまつわる短いエピソードを集めた一群の記録集。志怪とは〈怪を志(しる)す〉の意で,《荘子》に出ることば。現在では〈小説〉と呼ばれるが,当時の人々はむしろ歴史書の一部と考えていた。…

※「志怪」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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