日本大百科全書(ニッポニカ) 「異苑」の意味・わかりやすい解説
異苑
いえん
中国、六朝(りくちょう)宋(そう)代の説話集。10巻。劉敬叔(りゅうけいしゅく)著。現存のテキストは、明(みん)代に改めて編集されたもので、『津逮秘書(しんたいひしょ)』と『学津討源(がくしんとうげん)』の両叢書(そうしょ)に収められているものがもっともよくまとまっている。六朝時代に数多く著された志怪(しかい)書の一つで、内容は、当時の人物に関する怪奇な挿話、民間に伝わる超自然的な説話から、仏教説話にもわたり、他の志怪書と比べてかなり多彩である。著者劉敬叔は彭城(ほうじょう)県(江蘇(こうそ)省)の人。六朝の宋に仕え、文帝のときに、拝謁・奏上の取次ぎなどをつかさどる給事黄門郎(きゅうじこうもんろう)となり、泰始年間(465~471)に病没したと伝えられる。
[竹田 晃]
『前野直彬・尾上兼英他訳『幽明録・遊仙窟他』(平凡社・東洋文庫)』