忘れえぬ人々(読み)わすれえぬひとびと

改訂新版 世界大百科事典 「忘れえぬ人々」の意味・わかりやすい解説

忘れえぬ人々 (わすれえぬひとびと)

国木田独歩の短編小説。1898年(明治31)4月,《国民之友》に発表。溝口(みぞのくち)(現,川崎市)の旅館亀屋で,無名の文士大津が,たまたま泊まりあわせた画家の卵秋山に物語る形式となっている。大津には,親兄弟や先生と違って忘れても義理を欠くわけでもないのに,妙に忘れられない何人かの人々がいる。瀬戸内海通いの汽船甲板から見た寂しい小島の漁夫,阿蘇山のふもとで見た馬子,四国の三津が浜で見た琵琶僧などである。立身出世の妄執から解放されたとき,すべての者に対する同情の念が生まれ,人懐かしくなるというのである。山林海浜の小民に無窮天地に孤立する人間存在を見るという,独歩文学の原点を示す作品である。
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