情緒工学(読み)じょうちょこうがく(その他表記)emotion technology

日本大百科全書(ニッポニカ) 「情緒工学」の意味・わかりやすい解説

情緒工学
じょうちょこうがく
emotion technology

人間の情緒を研究し、それを工学の分野に活用しようとする学問。人間の精神活動は、論理的な思考や計算のような理性的機能と、喜怒哀楽などの感情的ないし情緒的機能に分けられる。このうち、情緒は人間のもっとも生物らしい側面であり、情緒・感情は理性を含む大脳活動に大きな影響を及ぼすものである。情緒工学は、バイオニクス(生物の優れた機能を取り入れた機械やシステムの開発を目的とする工学の一分野)の立場から情緒のコントロールを研究するものと、情緒を安定化するための環境操作の技術を究めるという二つの分野をもっている。情緒のコントロールは大脳生理学の分野でよく研究されており、視床下部に怒りの感情と行動をつかさどる作用があることは、以前から知られている。動物実験では、外側視床下部の電気刺激によって情動的防御反応がおこることや、刺激によって快楽感情をおこす部位のあることが発見されている。一方、環境操作の技術については、人間工学の課題として研究されており、心理学、色彩工学、環境工学、建築学、工業デザイン、美術などといった幅広い学問分野とその境界を接している。

[古川俊之]

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

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