改訂新版 世界大百科事典 「愛染王法」の意味・わかりやすい解説
愛染王法 (あいぜんおうほう)
愛染明王を本尊にして修する密教の修法。主として敬愛(和合親睦すなわち人の相愛・信服,夫婦の和合,仏法への帰依),降伏(ごうぶく)(人や仏法を害する悪を止め,兵乱の難をしずめること)などに功験があるとされる。この法は愛染王念誦法と護摩法とがあり,秘法とされるが,それとは別に最極秘法としての〈如法愛染法〉がある。日本における愛染王法の成立を求めると,小野曼荼羅寺開基の仁海(にんがい)が《愛染王大次第》《愛染王鈔》を編んだと伝えられており,その弟子の成尊(せいそん)は1065年(治暦1)ごろ後三条天皇の即位を祈ってこの法を修し,成尊の弟子範俊(はんじゆん)もしばしば愛染王法を修した。また80年(承暦4)に範俊は如法愛染法を修して《如法愛染次第》をあらわしている。この法に用いられる特殊な法具として人形杵(にんぎようしよ)と呼ばれる五鈷杵(ごこしよ)がある。
執筆者:木下 密運
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