朝日日本歴史人物事典 「成尊」の解説
成尊
生年:長和1(1012)
平安中期の真言宗の僧。覚鑁以前の真言教相の学者。小野僧都と称す。従来,奈良出身,延命麿の子とされてきたが,天台宗の僧成尋(『参天台五台山記』の著者として有名)と同母弟ではないかとの説もある。雨僧正として名高い山城(京都府)の小野曼荼羅寺(現在の随心院)の仁海のもとで出家,長暦3(1039)年に伝法灌頂を受ける。仁海に特に認められ,曼荼羅寺を付属される。康平8(1065)年には勅命を受けて神泉苑で請雨経法を修し霊験を現す。また後三条天皇の即位を祈って愛染明王法を修し寵愛を得る。弟子に義範と範俊がいる。成尊亡きあと,両者が付法の嫡庶を争い醍醐と小野の2派に分かれる。さらに中院流の祖,明算も弟子である。<参考文献>櫛田良洪『真言密教成立過程の研究』,長居義憲「成尊とその周辺―成尋および宇治大納言隆国―」(『密教学研究』9号)
(井野上眞弓)
出典 朝日日本歴史人物事典:(株)朝日新聞出版朝日日本歴史人物事典について 情報