日本大百科全書(ニッポニカ) 「戦時謀計」の意味・わかりやすい解説
戦時謀計
せんじぼうけい
戦争中その行使を禁止される害敵手段のなかに、戦時謀計のある種のものが含まれる。軍使旗、国旗その他の軍用の標章、敵の制服または赤十字条約の特殊記章を資格のない者が使用することはこれにあたる。敵の国旗や軍服を単に敵の攻撃を免れるため使用することは禁止されない。一定の戦時謀計の禁止理由は、敵の信頼を裏切る意図をもって、戦争法上保護される権利を有しまたは保護を与える義務があると敵に信じさせるために信頼を誘う背信行為とみなされることにある。戦争犠牲者保護に関する1949年ジュネーブ諸条約に対する1977年第一追加議定書は背信行為を明示的に禁止し、その例として、軍使旗または降伏旗を掲げて交渉の意図を装うことのほか、国際連合、中立国もしくは非紛争当事国の記章、標章または制服を使用して保護されていることを装うこと、さらに負傷や疾病による行動不能を装うこと、文民、非戦闘員の地位を装うことをもあげている。
[藤田久一]