戦時の傷病兵,捕虜,抑留者などの保護を目的としてジュネーブで結ばれた諸条約の総称。ジュネーブ条約ともいう。赤十字の創始者J.H.デュナンが1862年《ソルフェリーノの思い出》を著し,負傷兵の救済団体の設立と条約による救済活動と保護を訴え,これに呼応して64年スイスはジュネーブにヨーロッパ16ヵ国代表を招請して会議を開き,そこで〈戦地にある軍隊の傷者・病者の状態改善に関する条約〉(1906,29改正)が締結された。これが最初の赤十字条約である。99年にはこの条約を海戦に応用した条約がハーグ平和会議で結ばれ(1907改正),さらに,1929年に,〈捕虜の待遇に関するジュネーブ条約〉が成立した。第2次世界大戦の経験をもとに見直しが図られ,49年8月12日ジュネーブの外交会議で,これら3条約は大改正され,さらに,戦時における文民の保護に関する条約が調印された。日本は53年に加入。これらジュネーブ4条約は,有機的統一を図ったほか,従前と異なり,大幅に適用範囲を拡大し,とくに,内乱時にも守るべき最低限の保護を定め,また,条約遵守の確保を図る制度を強化した。ジュネーブ条約は現代国際法の発展に重要な貢献をしたが,1949年以後,ゲリラ戦による内乱(植民地解放闘争)の頻発や大量殺りく兵器の無差別的駆使など,当初予想もしなかった事態が現れ,種々の検討を経て,71年武力紛争において適用される国際人道法の再確認と発展のための政府派遣専門家会議が開催され,77年12月12日ジュネーブ4条約に対する追加議定書が採択された。追加議定書は,ジュネーブ条約の人道原則をいっそう実現するため,戦争の方法と手段に関する規定も含むこととなった(〈赤十字〉の項を参照)。
執筆者:芹田 健太郎
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出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
…63年10月26日から29日まで開催された国際会議は赤十字規約を採択し,各国に1社の赤十字社Red Cross Societyおよび赤十字国際委員会の設立を決定した。64年ジュネーブに各国の政府代表が集まりジュネーブ条約(赤十字条約)に調印し,国際赤十字を発足させた。条約には,(1)戦時傷病者は敵味方の区別なく看護されること,(2)看護にあたる人員・資材・施設は中立として保護すること,(3)国際会議開催に尽力したスイスに敬意を表し,スイス国旗の色を逆さにした白地に赤十字を赤十字の標章として用いること(ただし,現在,イスラム教国では宗教的理由から十字を使うのを嫌い,赤新月社Red Crescent Societyという組織名で,赤新月(せきしんげつ)の標章を使っている),(4)加盟国は各国政府の公認した1国1社の赤十字社をつくってジュネーブ条約の完全履行に協力すること,などが規定された。…
…しかし現実には,合法政府側がかかる承認を行う例はほとんどない。そのため,1949年ジュネーブ諸条約(赤十字条約)の共通3条は,非国際武力紛争の場合に,交戦団体承認の有無には言及せず,各紛争当事者が適用すべき最小限の人道的規定を列挙した。すなわち,敵対行為に直接参加しない者は,すべての場合に差別なく人道的に待遇されなければならず,なかでも,(1)生命,身体に対する暴行,とくにあらゆる種類の殺人,傷害,虐待および拷問,(2)人質,(3)個人の尊厳に対する侵害,とくに侮辱的で体面を汚す待遇,(4)正規の裁判所によるすべての裁判上の保障を与えた裁判によらない判決の言渡しおよび刑の執行は禁止される。…
※「赤十字条約」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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