扁桃病巣感染症(読み)へんとうびょうそうかんせんしょう(その他表記)Tonsillar focal infection

六訂版 家庭医学大全科 「扁桃病巣感染症」の解説

扁桃病巣感染症
へんとうびょうそうかんせんしょう
Tonsillar focal infection
(のどの病気)

どんな病気か

 扁桃病巣感染症とは、扁桃自体の症状はほとんどないか、または軽度の咽頭痛、異物感程度にすぎないにもかかわらず、皮膚腎臓、関節などにさまざまな障害を起こす病態です。この場合、扁桃を摘出することで症状改善が得られることから、原因が扁桃にあると考えられ、扁桃病巣感染症と呼ばれています。

 代表的な二次疾患としては、掌蹠膿胞症(しょうせきのうほうしょう)IgA腎症胸肋鎖骨過形成症(きょうろくさこつかけいせいしょう)がありますが、そのほか乾癬(かんせん)関節リウマチ微熱も扁桃病巣感染症に含まれます。

原因は何か・症状の現れ方

 掌蹠膿胞症では、主に手のひらと、足底部にだけ小さな膿疱が多数現れ、赤くなり、皮膚がむけることを繰り返すものです。皮膚科の病気で、女性に多くみられます。原因としては、免疫異常、金属アレルギーなどがいわれていますが、現在では扁桃病巣感染症が強く関与していると考えられています。

 IgA腎症は、初期には血尿と浮腫(むくみ)程度しか自覚症状がありません。しかし、長期にみると進行性の病気で20~40%が腎不全になります。IgA腎症の20~30%は、扁桃炎に代表される上気道炎を契機に発症し、尿症状の悪化を繰り返します。

 胸肋鎖骨過形成症では、鎖骨、胸骨、肋骨関節が腫脹(しゅちょう)し、痛みを伴います。これも女性に多い疾患です。

検査と診断

 診断には自覚症状、局所所見、血液検査、尿検査のほかに、扁桃と二次疾患の関係を調べることが必要です。これには扁桃をマッサージして、体温の上昇、白血球の増加、尿蛋白の変化などが起こるかどうかを調べる扁桃誘発試験があります。ただ、検査結果が陰性であっても、扁桃摘出により疾患が改善することがあるので、判断に注意が必要です。

治療の方法

 治療は、病巣感染の原因となっている口蓋扁桃を摘出(コラム)します。手術により、掌蹠膿胞症では皮診の改善、消失が80%以上、胸肋鎖骨過形成症では疼痛改善が81%、IgA腎症では尿蛋白の改善が50%以上にみられます。

出典 法研「六訂版 家庭医学大全科」六訂版 家庭医学大全科について 情報

家庭医学館 「扁桃病巣感染症」の解説

へんとうびょうそうかんせんしょう【扁桃病巣感染症】

 扁桃に病巣があって、扁桃そのものの症状はきわめて少ないか現われない程度ですが、遠隔臓器(病巣から離れた臓器)に二次的な病気がおこった場合を、扁桃病巣感染症といいます。
 二次的な病気としては、古くは溶連菌(ようれんきん)感染後のリウマチ性疾患や糸球体腎炎(しきゅうたいじんえん)がありますが、最近では、掌蹠膿疱症(しょうせきのうほうしょう)、胸肋鎖骨過形成症(きょうろくさこつかけいせいしょう)、IgA腎症のほか、乾癬(かんせん)、紅斑(こうはん)、関節リウマチ、筋炎、ぶどう膜炎(まくえん)などの一部に、扁桃が病巣となっているものがあります。
 症状としては、二次疾患固有の症状、たとえば皮疹(ひしん)、関節の腫(は)れや痛み、血尿(けつにょう)などが主です。
 ふだんは、のどの症状はほとんどないか、あっても軽度ののどの痛み・異物感程度ですが、典型例では、上気道炎(じょうきどうえん)や扁桃炎(へんとうえん)にかかると二次疾患の症状が悪化します。
 これらの症状は、薬物などによる対症療法でも一時的に改善しますが、根本的治療法としては、扁桃摘出術が有効な場合が多いものです。
 皮膚、骨関節、腎臓などに病気があって、上気道炎や扁桃炎にかかるとこれらの病気が悪化するといった場合には、耳鼻咽喉科医(じびいんこうかい)に相談することをお勧めします。

出典 小学館家庭医学館について 情報

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