乾癬(読み)かんせん(英語表記)psoriasis

翻訳|psoriasis

ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

乾癬
かんせん
psoriasis

皮膚疾患の一つ。皮膚表面からわずかに盛上がった,境界明瞭な,大小さまざまな丘疹あるいは暗紅色色斑が多数でき,その表面に雲母状の銀白色鱗屑 (りんせつ) が固着する。なおりにくい炎症性の角化症の一つ。乾癬のうち,膿疱をつくらず乾燥した状態で,発熱などの全身症状を伴わずに慢性に経過する,最もありふれたタイプを尋常性乾癬というが,これは頭髪の生えている部分,肘,膝,腰,尻などに左右対称に多発する。絶えず機械的な刺激の加わる膝,肘などによくできるケブネル現象,あるいは,鱗屑を爪などで無理にはがすと点状の出血を生じてくるアウスピッツ現象が,この乾癬に特徴的な症状で,診断の際に役立つ。原因はまだ明らかではないが,遺伝的要因が大きく,それに内外の環境因子が加わって発症するとみられている。ことに栄養の過多が問題で,近年日本でも著しく増加している。伝染する病気ではない。きわめて長い経過をたどり,治療は根治させるということより,その症状の発現を抑えることに重点がおかれる。なお,乾癬に類似した症状を呈するが,まったく異なるものに類乾癬がある。

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デジタル大辞泉の解説

かん‐せん【乾×癬】

紅斑の上に雲母(うんも)状の銀白色の鱗屑(りんせつ)が生じる慢性皮膚病。多く、ひじ・ひざなどにでき、落屑(らくせつ)が著しい。

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家庭医学館の解説

かんせん【乾癬 Psoriasis】

[どんな病気か]
 乾癬は慢性で非感染性の皮膚疾患です。ギリシア時代の医学書に、すでにこの病気のことが記載されています。赤く、うろこ状にカサカサした斑点(はんてん)、あるいは平らな盛り上がりができるのを特徴としています。
 乾癬は、皮膚の表皮細胞がたいへん速く増殖・成長し、皮膚の表面に移動していくためにできます。その速さは正常な皮膚細胞の7~10倍にもなり、その結果、うろこ状のカサカサ(鱗屑(りんせつ))が形成されるのです。
 原因については、これまでのさまざまな研究で、皮膚細胞の増殖(ぞうしょく)異常、代謝(たいしゃ)異常、最近では皮膚免疫機能(ひふめんえききのう)の異常だと予測されていますが、どれが主要因なのかは結論が出ていません。欧米の白人では、家族内に同じ乾癬をもつ人が多いことから、優性遺伝(ゆうせいいでん)すると考えられ、乾癬をひきおこす遺伝子の検索も始まっています。
 乾癬のおこる頻度は、日本人で0.1%以下と推定され、欧米人の10分の1以下ですが、患者数は少しずつ増加しているようです。
[症状]
 症状がもっともよく出るのは肘(ひじ)、膝(ひざ)、腰など摩擦(まさつ)の加わりやすい場所と頭です。赤く平らに盛り上がるカサカサした円形や楕円形(だえんけい)のできものを特徴とします(尋常性乾癬(じんじょうせいかんせん))。約半分くらいの患者さんにかゆみがあります。
 年齢的には、10~20歳代のころに初めて気づくことがもっとも多く、まれに乳児や高齢者でも症状が現われることがあります。
 皮膚以外の症状としては爪(つめ)の変化があり、30%くらいの乾癬患者さんに爪の点状のくぼみ、変形がみられます。
 関節の痛み、腫(は)れなどの症状がおこりやすいのも特徴の1つで、その症状はリウマチに似ています(乾癬性関節炎(かんせんせいかんせつえん))。
 尋常性乾癬のほかに、皮膚症状が重症になる紅皮症(こうひしょう)(全身の皮膚が赤くカサカサ状態になる)、悪寒(おかん)・発熱、皮膚に膿疱(のうほう)をともなう膿疱性乾癬(のうほうせいかんせん)(厚労省特定疾患(とくていしっかん))があります。いずれも入院治療が必要となる重症の乾癬です。
[検査と診断]
 皮膚科の専門医であれば皮膚症状だけで正確に診断します。類乾癬(るいかんせん)、毛孔性紅色粃糠疹(もうこうせいこうしょくひこうしん)との区別がむずかしく、病理組織検査が行なわれることもあります。
 乾癬と内臓疾患との関連はありませんが、ときに薬の副作用で乾癬ができたり、悪化することがあります。
[治療]
 さまざまな方法があります。薬剤を外用するもの、内服するもの、あるいは両者を組み合わせたもののほかに、光線療法や温熱療法などの理学療法も有効です。
 原因がまだはっきりしませんから、唯一で最高の治療法はありません。個々の患者さんによって、また、症状の程度によって、治療法は選択されます。必ず皮膚科専門医に相談しましょう。
 外用治療でも、長期間続けると副作用が出てきます。効果だけではなく、副作用のことも医師に確認し、正しい治療を続けましょう。
[日常生活の注意]
 他人の目にふれることが多く、慢性でもあることから、多くの患者さんは皮膚症状と合わせて、大きな精神的負担を抱えています。精神的ストレスも皮膚症状を悪化させる要因ですから、精神的な悩みと皮膚の症状が悪循環をくり返しがちです。日光浴、戸外の運動などの気分転換が大事です。また、日光は皮膚症状にも有効です。
 かぜ、扁桃炎(へんとうえん)、けがも乾癬の悪化因子です。そのほかにも、喫煙、アルコール、肥満は避けましょう。
 乾癬は放っておくと徐々に広がっていきますが、自然に小さくなることもあります。なかには完全に消えてしまう人もいます。希望を失わず、自分の乾癬とうまく付き合っていく気持ちがたいせつです。
 乾癬にかかっている仲間の人々と気持ちや情報を交換することも、治療生活をよい方向に導きます。
 現在、世界28か国に乾癬患者組織が設立されており、日本でも「乾癬の会」(コラム「乾癬の会」)が活動しています。米国ではインターネットサービスもあります。

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世界大百科事典 第2版の解説

かんせん【乾癬 psoriasis】

皮膚病変の一型で,さまざまな大きさの円形ないし楕円形の紅斑に,厚い雲母状鱗屑(りんせつ)(ふけ状のもの)が固着,銀白色を呈する状態をいう。代表的なものに尋常性乾癬があり,また特異型として,乾癬性紅皮症,膿疱性乾癬,関節症性乾癬および滴状乾癬が知られている。
[尋常性乾癬]
 上記の皮疹が,主として頭部,体幹,四肢伸側(ことにひじがしら,膝蓋)等に現れ,消長を繰り返しながら慢性の経過をたどり,治りにくい。

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大辞林 第三版の解説

かんせん【乾癬】

皮膚の紅斑の上に、表皮角層の上層が、銀白色の雲母状の大小の角質片状となる慢性皮膚炎。多く肘ひじや膝ひざ、頭部に生じる。

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知恵蔵miniの解説

乾癬

皮膚疾患の一種。皮膚の赤みの上に雲母状の皮膚のかけらが生じ、銀白色に覆われる状態を指す。主に頭部や肘、膝、尻、腰などに症状が現れることが多い。これを尋常性乾癬と呼び、患者全体の90%以上を占める。そのほかに特異型として、腫れ、痛み、変形といった症状が手足の指などの関節に現れる乾癬性関節炎や、小さな水滴大の発疹が全身に現れる滴状乾癬、尋常性乾癬が全身に広がる乾癬性紅皮症などがある。発症の原因はまだ特定されていないが、ウイルスや細菌による病気ではないため人に感染することはない。治療はステロイド剤の塗布や内服薬によって行う。乾癬に対する一般の理解を深めたり、治療の受けやすさを向上したりする目的から、世界各国の患者連合会は毎年10月29日を世界乾癬デーと定めている。

(2018-10-25)

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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

乾癬
かんせん

単に乾癬といえば普通、尋常性乾癬をさす。典型疹(しん)としては銀白色雲母(うんも)状の鱗屑(りんせつ)を付着する紅斑(こうはん)性浸潤局面で、比較的診断の容易な慢性皮膚疾患。ほかに滴状、環状、または地図状を呈することもある。本来、欧米を中心に多発する傾向にあったが、第二次世界大戦後、食生活の改善とともに日本でも急増してきた疾患で、一般に成人以後にみられるが、まれに小児期から発症することもある。好発部位は頭髪部、肘(ひじ)や膝(ひざ)、腰背部で、自覚症状はほとんどなく、増悪時にみられる丘疹性変化は比較的強いかゆみを伴う場合が多い。なお、尋常性乾癬のほかに特異的乾癬として、関節の腫脹(しゅちょう)や疼痛(とうつう)、さらに変形を伴う関節症性乾癬、膿疱(のうほう)と発熱などの全身症状を伴う膿疱性乾癬がある。膿疱性乾癬は特定疾患(難病)に指定されている。治療薬としての副腎(ふくじん)皮質ホルモン外用剤の普及により、その副作用として発症する局所的膿疱性乾癬が増加している。病因としては、遺伝形式は不明であるが遺伝因子の存在が示唆されており、内分泌、病巣感染、物理的刺激などが二次的因子として働き、発症するものと考えられている。
 一度発症すると生涯にわたり寛解と増悪を繰り返すため、患者の不安も大きく、治療には心理療法とともに、副作用の少ない薬剤を選ぶ必要がある。基本的な治療法としては、外用療法、内服療法、光線療法の三つがある。外用療法には、ステロイド外用薬、ビタミンD3外用薬などの外用薬(塗り薬)を用いる。内服療法には、レチノイド、シクロスポリン、メソトレキサートなどの内服薬(飲み薬)を用いる。光線療法では、紫外線を用いる。一つの治療法を単独で用いる場合もあるが、紫外線を吸収しやすいプソラレンpsoralen誘導体を含有する薬剤オクソラレンなどの内服または外用後にUVA(長波長紫外線)を照射するPUVA(プーバ)療法、あるいは合成ビタミンAのレチノイドの内服をPUVA療法に併用するなど、複数の治療法を組み合わせることもあり、個々の状況に即した方法を選択する。[山田 清]

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精選版 日本国語大辞典の解説

かん‐せん【乾癬】

〘名〙 皮膚病の一種。青年期以後に起こる慢性皮膚炎。粟粒から小豆くらいの紅斑ができ、それをふけのような皮がおおう。肘や膝、頭に発し、また、全身にもできる。
※全九集(1566頃)五「乾癬久く愈ず」

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