扁桃炎(読み)ヘントウエン(その他表記)tonsillitis

翻訳|tonsillitis

デジタル大辞泉 「扁桃炎」の意味・読み・例文・類語

へんとう‐えん〔ヘンタウ‐〕【×扁桃炎】

扁桃、特に口蓋扁桃の炎症。溶連菌肺炎菌・インフルエンザ菌の感染によるものが多く、赤くはれてのどが痛み、発熱する。扁桃腺炎

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精選版 日本国語大辞典 「扁桃炎」の意味・読み・例文・類語

へんとう‐えんヘンタウ‥【扁桃炎】

  1. 〘 名詞 〙 扁桃が赤く腫れる病気。主に細菌やウイルスの感染によって起こる。小児では高熱を発し、嚥下痛を強く訴えるが、年齢の進むに従って頻度が減少する。扁桃腺炎。扁桃腺。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「扁桃炎」の意味・わかりやすい解説

扁桃炎
へんとうえん
tonsillitis

扁桃の炎症をいうが、扁桃には大きいものだけでも咽頭(いんとう)扁桃、口蓋(こうがい)扁桃、舌根扁桃があり、それぞれに急性と慢性の炎症がみられる。しかし、一般に扁桃炎といえば口蓋扁桃炎をさす場合が多い。以下、それぞれの扁桃炎について急性と慢性に分けて述べる。

(1)急性口蓋扁桃炎 多くの場合ウイルス感染に始まり、すぐに細菌感染に移行する。溶血性連鎖球菌肺炎球菌、インフルエンザ菌の感染が多い。症状は発熱、不快感、咽頭痛、嚥下(えんげ)痛、頭痛などである。幼小児では症状が強く現れ、悪寒を伴うこともある。口蓋扁桃は発赤し、表面が単に腫脹(しゅちょう)しているもの(カタル性扁桃炎)、扁桃陰窩(いんか)に膿苔(のうたい)が付着しているもの(陰窩性扁桃炎)、扁桃濾胞(ろほう)に膿苔が付着しているもの(濾胞性扁桃炎)がある。ときに頸(けい)部リンパ節が腫大し、圧痛を生じたり、扁桃周囲炎や膿瘍(のうよう)を合併することがある。治療は、安静を守り、抗生物質や解熱剤の投与などを行う。

(2)急性口蓋扁桃炎の特殊型 口蓋扁桃の炎症が主病変で、他の扁桃や周囲の組織にも波及している病態をアンギーナ、口峡炎とよんでいる。ワンサンアンギーナは紡錘状菌と螺旋(らせん)菌の混合感染によるもので、深い潰瘍(かいよう)が生じるが全身状態や予後はよい。しょうこう熱性アンギーナは発赤が高度である。伝染性単核症によるアンギーナは膿苔がひどく、全身リンパ節や脾臓(ひぞう)の腫脹を伴う。

(3)急性咽頭扁桃炎 原因、症状、治療は急性口蓋扁桃炎とだいたい同じであるが、鼻閉(鼻づまり)、鼻漏、口呼吸などの症状が著明である。

(4)急性舌根扁桃炎 これも原因、症状、治療が急性口蓋扁桃炎とほぼ同じであるが、嚥下痛が強く、嚥下障害を伴う。

(5)慢性口蓋扁桃炎 急性口蓋扁桃炎を繰り返すこと(習慣性扁桃炎)が原因である。症状は一般に軽い。刺激感、異物感などがあり、ときに微熱がある。急性炎症を繰り返しおこす。扁桃は肥大し、圧迫すると膿が出る。表面に膿栓をみることもある。慢性口蓋扁桃炎が腎(じん)炎、関節炎、心内膜炎の原因になっていること(病巣感染)がある。この場合は扁桃が埋没し、見かけはむしろ小さいが、表面は凹凸があることが多い。治療は、全身の健康保持に努め、外出後にはうがいを行う。抗生物質、トローチ剤、咽頭塗布剤はほとんど効果がない。習慣性扁桃炎や病巣感染の原因になっている場合は手術で摘出する。

(6)慢性咽頭扁桃炎 咽頭扁桃が増殖肥大して腫瘤(しゅりゅう)状となるが、これをアデノイドという。

(7)慢性舌根扁桃炎 青年期以後、とくに老人に多い。急性炎症を繰り返すことが原因であるが、ときに口蓋扁桃摘出後におこることもある。咳(せき)、のどの異物感があり、扁桃は肥大している。

[河村正三]


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改訂新版 世界大百科事典 「扁桃炎」の意味・わかりやすい解説

扁桃炎 (へんとうえん)
tonsillitis

扁桃の炎症をいう。扁桃は1層の薄い上皮を隔てただけで,直接細菌などの抗原に汚染された外界と接触する。臓器が外界にさらされているのである。そのため常時炎症をくりかえし,抗体をつくることによって免疫機能に寄与している。つまり常時炎症をおこし,かつ炎症からくる組織損傷の修復をくりかえして成長し,また衰退する。したがって扁桃はつねに慢性的炎症の状態下にあり,あらゆる扁桃は慢性扁桃炎になっていて,急性扁桃炎は慢性扁桃炎の急性増悪像(急性化した組織像)にすぎないと考えてよい。以上の概念を頭に入れないかぎり,正確な扁桃炎に関する諸像ならびに病理を把握することはできない。なお一般に扁桃炎とは,結核,ジフテリア,梅毒などによる特異的なものでなく,ウイルスや溶連菌,ブドウ球菌などの細菌によるものを指していう。風邪,過労,睡眠不足ならびに塵埃(じんあい),ガスの吸入などがおもな誘因となる。

 急性扁桃炎はかつてアンギーナと呼ばれていたもので,咽頭痛,高熱,寒け,頭痛,全身倦怠感などを訴え,年数回くりかえすものを習慣性アンギーナと呼び,青少年に多い。急性扁桃炎は,炎症の範囲ならびに程度によって下記の四つに分けられる。(1)カタル性扁桃炎 粘膜を主とする表在性の炎症,(2)濾胞性扁桃炎 炎症が扁桃実質のリンパ濾胞あるいはリンパ小節を中心に小さい膿瘍を形成し,多数の黄白斑がリンパ濾胞に一致して透視できる,(3)陰窩(いんか)性扁桃炎 炎症がさらにひどくなると,扁桃の無数のくぼみ陰窩に栓子や膿汁の蓄積がおこり,陰窩に一致して黄白色の斑点を呈し,融合して偽膜を形成する。強力な抗生物質投与または陰窩にたまった汚物を洗浄して治すが,たびたびくりかえす習慣性アンギーナの場合には,扁桃を摘出すべきである,(4)潰瘍性あるいは実質性扁桃炎 炎症が扁桃実質全体を侵すもので,症状が最も重篤である。もちろん以上各型ははっきり区別できるものではなく,一つの型から別の型に移行したり,鼻炎,咽頭炎,喉頭炎などを合併したりする。また扁桃の周囲疎性結合組織を侵す扁桃周囲炎や扁桃周囲膿瘍を併発して,咽頭痛,高熱のほか,嚥下困難や呼吸困難をおこしたりする。

 このように扁桃がたびたび炎症をくりかえし,さらに喫煙,有毒ガス,塵埃の洗礼を受けると慢性扁桃炎となる。とくに成人の慢性扁桃炎でたびたび急性増悪(急性化)をくりかえす扁桃は,埋没的で,肥大するよりむしろ萎縮して小さく,瘢痕(はんこん)組織が増えてかたくなる。また咽頭粘膜全体をひっくるめて表面が滑らかでなく,咽頭の違和感,咳払い,痰がからんですっきりしないなどの症状に悩まされる。ときに腎炎やリウマチなどの2次疾患の病巣となるので注意しなければいけない。吸入,ネブライザー,扁桃洗浄,うがいなどの局所療法に専念し,抗生物質はできるだけ使わない。病巣感染をおこしたり,習慣性アンギーナで日常生活に支障をきたすときには,積極的に手術を考える必要がある。
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食の医学館 「扁桃炎」の解説

へんとうえん【扁桃炎】

《どんな病気か?》


〈扁桃の免疫機能が低下して細菌感染を起こす〉
 のどには、外から細菌が侵入しないよう、たくさんのリンパ組織があります。このリンパ組織が集まって大きくなったものが扁桃(へんとう)(一般に扁桃腺(へんとうせん)と呼ばれる部分)です。
 扁桃はふだんは強力な免疫(めんえき)機能をもっているため、細菌やウイルスが侵入しようとしても排除できます。
 けれども過労やストレス、のどの衛生状態の悪化などによって免疫機能が低下すると、細菌やウイルス感染を許してしまいます。これが扁桃炎です。
 扁桃炎を起こすと、のどに痛みを感じるようになり、やがて悪寒(おかん)がし、38~40度の高熱がでます。
 子どもは扁桃炎にかかりやすいものですが、年に何度も扁桃炎にかかる場合、習慣性扁桃炎といいます。

《関連する食品》


〈ビタミンCは柑橘類からとると吸収率がアップ〉
○栄養成分としての働きから
 体に抵抗力をつける栄養素をとることがポイントになります。
 ビタミンAは、のどの粘膜(ねんまく)を丈夫にし、ウイルスや細菌の侵入からまもってくれます。
 ビタミンAには、レバー、ウナギなど動物性食品に含まれるレチノールと、コマツナ、ニンジン、シュンギク、アシタバ、シソ油などの植物性食品に含まれるカロテンとがあり、カロテンは体内で必要量だけビタミンAにかわります。変換されなかったカロテンは、免疫細胞を活性化する働きがあります。
 キウイ、イチゴ、ミカンなどに含まれるビタミンCにも、白血球(はっけっきゅう)の働きを強化して免疫力を高める作用があります。
 このビタミンCの吸収を助けるのが、フラボノイド(ビタミンP)です。ビタミンPは柑橘類(かんきつるい)の果肉を包む薄皮に多く含まれているので、ミカンやネーブルオレンジなどを薄皮ごと食べて、ビタミンC、Pをとれば、効果的に体内に吸収されます。
 免疫細胞はインターロイキンと呼ばれる化学伝達物質を使って相互に連絡を取り合い、連携してウイルスや細菌と戦いますが、インターロイキンの産生をうながして劇的に免疫力を高めてくれるのが、ビタミンEです。
 ビタミンEは、アーモンドやウナギ、たらこに多く含まれます。
 扁桃炎にかかると、発熱のために食欲がなくなります。食べられないときは、せめて脱水状態にならないよう、水分だけは補給するようにしてください。

へんとうえん【扁桃炎】

《どんな病気か?》


 扁桃(へんとう)(一般に扁桃腺(へんとうせん)と呼ばれる部分)に細菌などが感染して炎症が起こる病気です。扁桃には免疫力があり、健康な状態なら、細菌やウイルスがついても排除できますが、過労やストレスなどで抵抗力が低下していると、感染が起こり、発症します。
 症状は、扁桃が赤く腫(は)れて、のどが強く痛み、寒けがしたあと、高熱がでます。子どもがかかりやすい病気ですが、大人でもかかることがあり、最近は、性行為によってクラミジアやヘルペスウイルスが感染して扁桃炎が起こるケースもふえています。

《関連する食品》


〈粘膜を強化し免疫力を高めるビタミンA〉
○栄養成分としての働きから
 ビタミンAには、粘膜(ねんまく)を強化し、免疫力を高める働きがあります。
 ビタミンAのうち、動物性食品に含まれるレチノールをとるには、レバー、ウナギ、チーズ、たまごなどの食品がいいでしょう。また、植物性食品に含まれ、体内でビタミンAにかわるカロテンをとるには、コマツナ、ニンジン、シュンギク、ナノハナ、カボチャなどを食べると効果的です。
 ビタミンCにも免疫力を強化する作用があります。イチゴ、パパイア、キウイなどのくだものや、ブロッコリーなどの野菜、イモ類などに多く含まれます。のどが痛いときはジュースにしたり、やわらかく煮(に)てスープにするなどして摂取しましょう。
○漢方的な働きから
 ザクロの実1個を180cc程度の水で煎(せん)じ、これでうがいをすると、のどの痛みがおさまります。

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百科事典マイペディア 「扁桃炎」の意味・わかりやすい解説

扁桃炎【へんとうえん】

普通は連鎖球菌肺炎球菌ブドウ球菌などによる扁桃(口蓋扁桃)の急性炎症をいう。扁桃が赤くはれ,しばしば白斑を生じ,発熱,嚥下(えんげ)痛をみる。治療は安静,うがい,解熱薬投与など,重症の場合はサルファ剤,抗生物質を投与する。腎炎心内膜炎などを併発することがあるので注意を要する。炎症が扁桃周囲に波及し膿瘍(のうよう)を形成するものを扁桃周囲膿瘍といい,嚥下痛が激しく,切開排膿を要することが多い。
→関連項目アンギーナ上気道炎ひきつけ扁桃肥大リンパ節炎

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「扁桃炎」の意味・わかりやすい解説

扁桃炎
へんとうえん
tonsillitis

口蓋扁桃の炎症をいう。急性扁桃炎は,レンサ球菌,肺炎菌,ブドウ球菌などの感染が,普通は感冒の際や気候の変化,過労などによって起きる。局所が発赤,腫脹して白斑が生じることが多く,39~40℃の高熱を伴いやすい。さらに,病巣感染によって腎炎,関節炎などを併発することがあるので,この点にも注意を要する。慢性扁桃炎は,急性炎症の反復,扁桃周囲炎や膿瘍の反復,鼻副鼻腔炎症などが原因となり,症状は穏やかであるが,ときどき再燃し,やはり病巣感染の源となることがある。その際には適当な時期に扁桃摘出術を行う必要があると考えられている。

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世界大百科事典(旧版)内の扁桃炎の言及

【アンギーナ】より

…かつて扁桃炎として呼びならわされたもの。現在では医学的に習慣性アンギーナhabitual angina,習慣性扁桃炎という場合以外には,耳鼻咽喉科領域ではあまり使われていない。…

※「扁桃炎」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

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