精選版 日本国語大辞典 「手許」の意味・読み・例文・類語
て‐もと【手許・手元】
- 〘 名詞 〙
- ① 手の届くあたり。身の回り。手回り。
- [初出の実例]「遠近の里のをとめ子さなへとる手もとにくれて日影なき迄」(出典:為忠集(鎌倉中か))
- ② 手に握る部分。手に持つ部分。
- [初出の実例]「熊手の柄を手本二尺許おきて、つんど切っておとされければ」(出典:平治物語(1220頃か)中)
- ③ 何かをするときの手の動き。てつき。手なみ。腕前。技量。
- [初出の実例]「為朝が手本はおぼゆるものを」(出典:保元物語(1220頃か)中)
- 「初てのむこ殿には、包丁の手元を見ます」(出典:狂言記・料理聟(1730))
- ④ ( 相手の手なみが見たいの意から ) 酒をすすめられた時、逆に相手にすすめる語。
- [初出の実例]「おてもと見まして、お間(あい)いたさふと罷出ば」(出典:浮世草子・傾城色三味線(1701)湊)
- ⑤ 箸(はし)をいう女房詞。〔日葡辞書(1603‐04)〕
- ⑥ 暮らし向き。生計。生活。
- [初出の実例]「手元が詰るに従うて謂ふまじき無心の一つもいふやうになると」(出典:葛飾砂子(1900)〈泉鏡花〉八)
- ⑦ 「てもときん(手許金)」の略。
- [初出の実例]「その上私も、相応に手許もござったれども」(出典:山本東本狂言・因幡堂(室町末‐近世初))
- ⑧ =てしょう(手証)
- [初出の実例]「内じゃア手めへがこうこうだと先刻にかんは附てゐたが、手元(テモト)を見ずにゃア口は聞けねへと」(出典:人情本・春秋二季種(1844‐61頃)三)