才取(読み)さいとり

日本大百科全書(ニッポニカ) 「才取」の意味・わかりやすい解説

才取
さいとり

証券取引所立会場内で取引所正会員(証券業者)間の売買取引が円滑に行われるよう仲介業務を専門としていた証券業者。才取会員(大阪では仲立(なかだち)会員)ともいい、資本金100万円以上の株式会社であることが法定されていた。才取会員は一般顧客の売買は取り扱わず、原則として正会員のように委託売買や自己売買ができない。才取会員は業務の特殊性から、売買高の多い東京、大阪、名古屋の三大証券取引所だけに設けられていた。取引所に上場されている多数の銘柄について、証券会社どうしだけで売買の出会いをつけることはむずかしい。そこで、立会場内にいくつかの銘柄別の売買ポストが設けられ、各証券会社の注文はそれぞれ銘柄を担当している才取会員の仲介によって注文の条件が合致すれば付け合せのうえ売買が成立し、その約定値段が取引所に知らされて相場として値段表示された。1999年(平成11)、立会場が廃止され、株式売買の注文付け合せが完全に自動化されたことなどで、才取会員は姿を消した。

[桶田 篤]

『東証才取会員協会編・刊『才取史』『才取史2』(1975、1990)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の才取の言及

【証券取引所】より


[日本の組織]
 日本の証券取引所は会員組織の非営利法人で,設立には大蔵大臣の免許が必要である。会員は証券会社に限られ,さらに東京,名古屋,大阪の3取引所では会員(取引所会員)を正会員と才取会員に分けている。正会員は取引所市場で自己の名をもって,自己または他人の計算において,売買取引を行うことを業務とする者であり,才取会員(略して才取という)は正会員間の売買取引を媒介することを業務とする者である。…

【東京証券取引所】より

…東株は営利を目的とする株式会社組織であったが,取引所自体の株式を上場し,投機を助長するなどの弊害も少なくなかったため,抜本的に改められたものである。会員は大蔵大臣の免許を有する証券会社に限られ,取引所市場で売買取引のできる正会員と正会員間の売買取引の媒介を専業とする才取(さいとり)会員(略して才取ともいう)がある(取引所会員)。定款により定数は1982年で正会員83社以内,才取会員12社以内となっている。…

【取引所】より

…商品あるいは債券,株式などの有価証券を大量にすばやく取引する目的で組織された常設市場。取引の場所,時間,対象の品目をあらかじめ決め,一定の資格をもつ売手と買手が定められたルールに基づいて自由に売買する仕組みになっている。人が交換の場を求めて寄り集まっていく過程で,物と物との交換の媒介物である貨幣が登場し,生産,流通の規模が膨らんでいくとともに,市場経済の潤滑油の役割を果たす取引所の初歩形態が誕生する。…

【仲買】より

…これとは別に,〈すあい〉と呼ばれる仲買商人がいた。《七十一番職人歌合》では女の姿で描かれているが,素手で商品取引を行い,仲介料を取るものであり,牙儈,才取,牙婆,女商,牙儈女などと書く。越前南条郡の浦山内馬借は〈すわひ付の荷〉を扱わない旨の規約を結んでいる(〈西野文書〉)。…

※「才取」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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