所定の手数料を支払い,他の業者に委託して行う商品の売買のことであり,販売を委託する〈委託販売〉と,買付けを委託する〈委託買付〉に分けられる。委託売買において委託を受ける業者,すなわち受託者は,おおむね日本における商法上の問屋に該当し,自己の名義で取引を行うが,取引から生ずる損益はあくまでも委託者に帰属するのが通例である。したがって委託販売では,委託者からゆだねられた商品を自己の名義で販売し,その代金から手数料を差し引いたものを委託者に支払い,また委託買付では,買付けを委託された商品を自己の名義で買い付け,その代金に手数料を加えた金額を委託者に請求する。委託売買は,商品の売買を行おうとする者が,その商品の業界事情や取引の相手の信用状況等について十分情報を有していない場合に,手数料を支払って業界事情に通じた業者に売買を委託したほうが有利であり,また受託者の立場からみても,商品の売れ残りや値下がりのリスクを負うよりも,確実に所定の手数料を受け取っていくほうがよいという事情を,基本的な背景としている。
このような委託売買は,日本では,かつて交通・通信手段が未発達で取引相手の信用状態も悪く,多くの人々にとって商取引に伴うリスクが大きかったころに,問屋取引として展開し,業界事情に通じた問屋の信用と取引技術などによって,取引の円滑化が図られたという経緯がある。商法上の問屋は,このような歴史的事情を反映しているといってよい。交通・通信手段の発達した現在では,かつてのような意味での取引上のリスクは減少し,委託売買を専業とする問屋はほとんどみられなくなり,輸出入など国際取引や国内取引では,肉・魚介・青果物など生鮮食品の卸売市場におけるせり売買,書籍・雑誌類の取引などに組織的な委託売買がみられるだけである。しかし現実には,取引金額の巨大化によって信用上のリスクはむしろ増大してきており,〈商社のコミッション・マーチャント化〉という指摘にもみられるごとく,委託売買そのものは個々の取引ベースでまだかなり幅広く行われている。
執筆者:木綿 良行
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