日本大百科全書(ニッポニカ) 「技術開発衛星」の意味・わかりやすい解説
技術開発衛星
ぎじゅつかいはつえいせい
人工衛星はさまざまな軌道で多様な目的で使われている。そのためいろいろな条件での技術開発や試験が必要で、多くの衛星が打ち上げられている。これらの衛星では搭載するセンサー制御システム、通信機、アンテナ、電波などの試験、技術開発が行われる。打ち上げられた技術開発衛星は1957年以来2002年末までの状況で、人工衛星打上げ約5500基のうち3分の1強を占めている。とくにロシア、アメリカが多く、これに次いで日本とフランスが多い。しかし、約90%近くがロシアとアメリカで、この2国では軍事衛星、とくに偵察目的に使われているものが大半と推定される。1988年アメリカで国際調達の制限を行う包括貿易法「スーパー301条」が制定されたが、これに基づく貿易交渉で、日本が国内のメーカーに発注する政府調達衛星は技術開発衛星に限られ、通信衛星、放送衛星、地球観測衛星などの実用衛星は国際的に調達することとなった。継続的な運用を行う実用衛星と異なり、研究開発試験を行うものは前記の法律の適用を受けない。
[坂田俊文]
『日本宇宙少年団編、的川泰宣・毛利衛監修『スペース・ガイド』各年版(丸善)』