センサーを搭載し、大気や海洋、地表面などの詳細な観測を全球にわたって繰り返し行うことを目的とした人工衛星。衛星は、軌道高度500キロメートルから1000キロメートルの太陽同期回帰軌道(同じ場所を毎回同じ時間で観測できる軌道)に投入される。アメリカのランドサット衛星に始まる地球観測は、当初80メートルであった解像度が2016年時点では25センチメートルまで向上し、画像データはだれでも購入することができる。2000年以降、大学やベンチャーによる小型の地球観測衛星も次々と打ち上げられ、同時に数十機の衛星を運用することで観測頻度を上げるなど、新たなサービスが開始された。地球観測に使われるセンサーは、光学センサーとマイクロ波センサーに大別される。光学センサーは太陽を光源として地表面からの反射光を計測し、地表の被覆状態や地盤形状、農作物の生育状況などをモニタリングする。マイクロ波センサーでは、パルス状のマイクロ波を地表に向けて発射し、その反射波の強度や偏波から地表の状態を映像化する合成開口レーダー(SAR:Synthetic Aperture Radar)が活躍している。
日本では1987年(昭和62)に打ち上げた海洋観測衛星「もも1号」以降、2016年(平成28)までに10機の地球観測衛星を打ち上げている。地球資源衛星「ふよう1号」(1992)に搭載された合成開口レーダーは、その後の地球観測の新たな可能性を開拓した。環境観測技術衛星「みどり」(1996)および「みどり-2」(2002)は、地球環境の解明のため最先端のセンサーを搭載した国際協力による大型衛星である。環境観測シリーズは地球環境観測衛星GCOM(ジーコム)(Global Change Observation Mission)に引き継がれ、2012年には水循環を観測する「しずく」が打ち上げられた。陸域観測技術衛星「だいち」(2006)は3種類のセンサーを搭載し、地図作成や災害状況把握、資源探査に活躍し、2011年に運用を終了した。また後継機の「だいち2号」は合成開口レーダーのみを搭載し2014年に打ち上げられた。地球温暖化で問題となっている二酸化炭素やメタンの吸収・排出量を地球規模で計測する温室効果ガス観測技術衛星「いぶき」は2009年に打ち上げられ、後継機の「いぶき2号」が2018年に打ち上げられた。また、2014年に打ち上げられた「あすなろ」は、これまでの地球観測衛星よりも小型化され、解像度0.5メートル以下の観測衛星でシリーズ化が予定されている。
[森山 隆 2017年1月19日]
『大林成行編著『人工衛星から得られる地球観測データの使い方』(2002・日本建設情報総合センター、大成出版社)』▽『石塚直樹他著『農業リモートセンシング・ハンドブック』(2007/増補版・2014・システム農学会)』▽『岡本謙一監修、川田剛之他著『宇宙からのリモートセンシング』(2009・コロナ社)』▽『日本リモートセンシング学会編著『基礎からわかるリモートセンシング』(2011・理工図書)』
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
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