日本大百科全書(ニッポニカ) 「押しずし」の意味・わかりやすい解説
押しずし
おしずし
箱にすし飯を詰め、その上に具を置き、圧力を加えてつくるすし。大阪ずしはその代表的なもの。古くからある馴(な)れずしも、自然発酵を早めるために重石(おもし)をしたり、縄で縛ったりして押しをかけたから、押しずしの一種ともいえる。今日押しずしというと大阪ずしの別名のようになっているが、箱ずしの名がこの種のすしの総称である。箱ずしは押すのが目的であり、発酵はさせない。これらのすしは関西に多く、天明(てんめい)(1781~89)ころには京坂地方では温鮨(あたためずし)がつくられていた。熱い飯ですしをつくり、箱に入れ、押しをしてふとんに包み、熱からず冷たからず、すなわち温かい状態にしておくのである。現在は蒸しずしの形として存在している。黄身(きみ)ずしは、ゆで卵の黄身をばらばらにしてすし飯に混ぜ、押したすし。兵庫ずしは、ハモの身に飯を混ぜ、箱に入れ、上に塩ゆでのタコの足を小口切りにしたもの、キクラゲのせん切り、アオザンショウなどを置き、押してつくる。こけらずしは、箱にすし飯を入れ、シイタケ、キクラゲ、ミツバ、薄焼き卵、魚肉などを置き、何段か同じものを重ね、押してつくる。
[多田鉄之助]