はも

精選版 日本国語大辞典 「はも」の意味・読み・例文・類語

は‐も

(係助詞「は」「も」の重なったもの。→語誌(1))
文中の連用語を受け、「は」は係助詞として受ける体言と述語用言との結合を強め、「も」は詠嘆を表わす。→語誌(2)。
万葉(8C後)四・七六一「速川の瀬に居る鳥のよしをなみ思ひてありし我が子羽裳(はも)あはれ」
蜻蛉(974頃)中「忌は今はもすぎぬらんを」
文末にあって詠嘆を表わす。→語誌(3)。
古事記(712)中・歌謡「さねさし相摸の小野に燃ゆる火の火中に立ちて問ひし君波母(ハモ)
古今(905‐914)雑上・八九一「ささの葉にふりつむ雪のうれを重み本くだち行くわがさかりはも〈よみ人しらず〉」
[語誌](1)語源的には「は」「も」いずれも係助詞であるが、文中用法の場合「も」の方は間投機能、文末用法では二語とも間投機能を担っていると考えられる。
(2)文中用法は上代にも少なく、中古以降はほとんど見られなくなる。
(3)②の用法は和歌にみられるが、中古の例も含めて、ほとんどすべて体言を受ける「喚体の句」の例であり、いわゆる「述体の句」を受けるのは、「万葉‐四四一九」の「家ろには葦火(あしふ)焚けども住み良けを筑紫に至りて恋ふしけも波母(ハモ)一例のみである。ただし、この例に関しては「恋しけむはも」ではなく「恋しく思はむ」の東国語形であるとの説がある。
(4)「万葉‐三五一三」の「夕さればみ山を去らぬ布雲(にのぐも)の何(あぜ)か絶えむと言ひし児ら婆母(ハモ)」、「万葉‐三五六九」の「防人に立ちし朝明の金門(かなと)出に手離れ惜しみ泣きし児ら婆母(ハモ)」の例を「ばも」とよみ、「はも」の上代方言とする説〔日本古典文学大系=万葉集〕もあるが、「万葉‐一七一」にも「島婆母」の例があるので、これも濁音と認めねばならぬか否か決め難い。

出典 精選版 日本国語大辞典精選版 日本国語大辞典について 情報

デジタル大辞泉 「はも」の意味・読み・例文・類語

は‐も

[連語]《係助詞「は」+係助詞「も」》感動・詠嘆を表す。…はまあ。…だなあ。
「高光る我が日の皇子みこ万代よろづよに国知らさまし島の宮―」〈・一七一〉
[補説]主に奈良平安時代の和歌にみられる。文末にあっては、「は」「も」を終助詞とする説もある。

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

今日のキーワード

青天の霹靂

《陸游「九月四日鶏未鳴起作」から。晴れ渡った空に突然起こる雷の意》急に起きる変動・大事件。また、突然うけた衝撃。[補説]「晴天の霹靂」と書くのは誤り。[類語]突発的・発作的・反射的・突然・ひょっこり・...

青天の霹靂の用語解説を読む

コトバンク for iPhone

コトバンク for Android