日本大百科全書(ニッポニカ) 「拘束介護」の意味・わかりやすい解説
拘束介護
こうそくかいご
介護保険施設などで、高齢者を紐(ひも)や抑制帯などを用いてベッドや車椅子(いす)に縛りつけるなど、身体の自由を奪う拘束によって介護を行うこと。身体拘束の目的には、徘徊(はいかい)やベッドからの転落および車椅子からのずり落ちや立ち上がり防止、点滴や経管栄養チューブの抜去行為の防止、他人への迷惑行為の防止などがあげられるが、緊急やむをえない場合を除き、高齢者虐待防止法により原則禁じられている行為である。緊急やむをえない場合とは、本人や他人の生命や身体が危険にさらされる可能性がきわめて高い場合で、身体拘束以外に介護方法がないこと、また身体拘束が一時的なものであること、これらすべての条件を満たしていなければならない。また身体拘束を行う場合は、必要性を施設全体で判断して拘束に関する記録を残し、拘束の内容や期間などを本人および家族に説明して理解を求める必要がある。
近年、とくに無認可介護施設などでの拘束介護が社会問題化しており、厚生労働省の身体拘束ゼロ作戦推進会議では、過剰な拘束を防止するために「身体拘束ゼロへの手引き」を発行し、身体拘束が許される条件と拘束の実際について、具体的で詳細な指針を提示している。
[編集部 2016年7月19日]