車椅子(読み)クルマイス(英語表記)wheel chair

デジタル大辞泉 「車椅子」の意味・読み・例文・類語

くるま‐いす【車椅子】

歩行が不自由なときに腰掛けたまま移動できるように、椅子に車輪をつけたもの。

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精選版 日本国語大辞典 「車椅子」の意味・読み・例文・類語

くるま‐いす【車椅子】

  1. 〘 名詞 〙 歩行に不自由な人が、すわったまま、両側につけた大きな車輪を手で操作して動きまわれるようにした椅子。電動式もある。また、病院などで、歩行困難な患者を座ったまま移動させる手押しの運搬車。
    1. [初出の実例]「看護婦が車椅子を押して出て来る」(出典:エオンタ(1968)〈金井美恵子〉一五)

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「車椅子」の意味・わかりやすい解説

車椅子
くるまいす
wheel chair

下肢の麻痺(まひ)などのために杖(つえ)などを使っても歩行ができない人が、自分の足がわりとして自ら操作しながら移動できる車輪付きの椅子の総称。標準型のもののほか、いろいろな種類の車椅子がつくられている。脊髄(せきずい)損傷による両下肢麻痺や脳血管障害による下肢麻痺の人など、その需要は多い。広く一般に使われるようになったのは1932年にアメリカで車椅子を専門につくる会社ができてからである。

 車椅子の標準型としてもっとも普及しているJIS(ジス)型は、椅子に取り付けた前方の小車輪と後方の大車輪とからなり、小車輪はキャスター輪とよばれ自由に回る自在輪である。大車輪は駆動輪であり、走行用リング(ハンドリム)がつけられており、自分でこれを回して運転する仕組みになっている。これを意のままに操作するためには訓練が必要で、乗降訓練や走行訓練のほか、バランスよく座る訓練も重要である。標準型の場合には上肢の筋力が強くなければ、操作が上達しにくい。

 車椅子にはこのほか、操作がもっとも簡単で老齢者向きの前方大車輪型、両手が使えない人のための片手駆動型、椅子付き三輪自転車ともいえる屋外走行用の手動チェーン型をはじめ、手押し型、腹臥(ふくが)位走行型などの特殊型もある。また、軽くて折り畳みやすい携帯用で容易に自動車にも乗せられるものや、手で操作できない人のためにはスイッチを押すだけで操作できる電動式車椅子などもある。

 車椅子を自由に乗りこなせるようになれば、バスケットや洋弓、ジグザグに走行するスラロームなどの車椅子スポーツが楽しめる。これは医学的リハビリテーションとして実際に行われている治療体操の一分野でもある。また、オリンピック開催年に行われるパラリンピックは、国際的な身障者スポーツの代表的なものであり、日本でも1962年(昭和37)以来、国際大会に選手を出場させている。なお、車椅子スポーツに使うスポーツ車の総重量は13キログラムで、標準型の約20キログラムに比べて軽量であり、敏捷(びんしょう)に操作走行ができる車椅子である。

 車椅子が必要な下肢不自由者は、各都道府県の指定医の身体障害者診断書によって身体障害者手帳交付を受ければ、車椅子をつくる場合に公費が助成される。下肢不自由者にとっては車椅子は消耗品であり、平均耐用年数は5年といわれ、そのつど新調する必要がある。また、車椅子を自宅で使用するには、出入口スロープをつくるなどの改築が必要になる。最近は車椅子使用者のために、車椅子のまま乗降ができるタクシーバスなどもあり、病院など大きな公共ビルには車椅子用トイレが設置されるようにもなった。

 なお、車椅子は下肢不自由者が自分で使用するものであるが、病院などでは起立歩行ができない人を運ぶための運搬車としても利用されている。

[永井 隆]

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改訂新版 世界大百科事典 「車椅子」の意味・わかりやすい解説

車椅子 (くるまいす)
wheel chair

座位の患者の輸送や障害者の装具として用いられる車つきのいす。元来座位における患者輸送車として考えられ,安定性のよい強い構造のものが求められてきたが,近年国際的にも障害者の活動とくに車いす使用者のスポーツが盛んとなり,日本でも障害者の日常生活用具や社会生活用具としての役割が認識されるようになった。患者輸送車として用いる場合には介助者が付き添うが,装具として用いる場合には自走することが前提となる。標準的車いすはJIS(日本工業規格)に定められたものを使用して,たとえば座面の高さや幅,座面の奥行き,背もたれ,ひじあて,駆動用車輪などについても,大・中・小の汎用型が最大公約数的な数値によって設計されている。日本人の成人では,中肉中背が中型に対応する。もちろん個人差があるため,これらの一つ一つについて処方することもできるので,障害の内容に適したものを用いるべきである。寸法のいかんを問わず,JIS規定部品を使用し,JISによって工作したものは規格品として認められる。特殊な型の車いすとしてトラベラー型(前方大車輪型)があるが,特別の訓練を要せず,容易に操縦できる利点があり,老人用,あるいは公共施設用として使用されることが多い。ちょうど普通型の前後が逆になったような形状を示す。ワンアームドライブ型(片手駆動型)は片麻痺者や片側切断者などが1上肢のみで車いすを操作する必要のある場合に処方される。片側にハンドリムが2個装備されているために操縦が容易でない点に問題がある。スポーツ仕様車は,普通型を基本とし,軽量化と操作性,機敏性を増すために特殊な処方がなされている。現在,普通型の重量が約20kgであるのに,スポーツ車にすると13kg程度に減量できる。電動車いすは,モーターを用いることによって移動をより自立に近づけ,医学的にリハビリテーションの立場から使用の妥当性がある場合に処方がなされる。やはり補装具と考えるべきで,産業の場や社会生活用具としての役割もある。
装具
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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典 「車椅子」の意味・わかりやすい解説

車椅子
くるまいす
wheelchair

人の移動を補助するために,椅子などの座面に車輪を取り付けたもの。正確な起源は不明だが,前6~前4世紀には存在したという説もあり,17世紀にはヨーロッパで障害者が自走式の椅子を用いたという記録がある。1932年アメリカ合衆国の鉱山技師で障害をもつハーバート・A.エベレストと医療技術者ハリー・C.ジェニングズは,交差ブレース(Xフレーム)機能を導入した車椅子を開発,使用しないときに鋏のように横に折りたたむことのできる構造が現代の車椅子の標準となった。車椅子には手動式と電動式とがあり,手動式には利用者が後輪(駆動輪)の外側の輪(ハンドリム)を自分で操作して進む自助式(自操式)と,介助者が後ろから押すことによって動く介助式とがある。長時間座る人向けに座面などの調整がきくモジュール型,リクライニング型,ティルト型などもある。操作方法はさまざまで,たとえば脊髄に損傷を受けた人は上肢を使って,身体の片側だけに麻痺が残る人なら反対側の上肢と下肢を使って,歩くには歩行器か杖が必要だが歩く持久力がない人は下肢を使って操作する。電動式車椅子は電動モータで車輪を駆動するが,道路交通法で規定される電動式車椅子は歩行者と同等とされ,自動車運転免許は必要としない。(→バリアフリー

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世界大百科事典(旧版)内の車椅子の言及

【リハビリテーション】より

… 障害者のための街づくりも進められている。たとえば交通機関の場合,駅の利用についても,視力障害者や車椅子使用者も安全に利用できるような対策が考えられなければならない。こうした問題は障害者自身の実際の詳細な評価がもとになるべきことで,その改善には障害者の意志によるところも大きい。…

※「車椅子」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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