改訂新版 世界大百科事典 「拝領町屋敷」の意味・わかりやすい解説
拝領町屋敷 (はいりょうまちやしき)
江戸で,御家人など下級の幕臣に与えられた拝領屋敷内に長屋を建て,町方の者を居住させ,賃貸料を取ることを認められたもの。幕府の具足同心,黒鍬方,小人方,納戸同心,伊賀者,掃除者といった下級幕臣が組単位で一括して与えられた拝領地に,町家作をしたいとの願い出が多くなったのは寛文~元禄期(1661-1704)であった。これら下級幕臣に与えられる扶持米では生活を維持できないため,幕府は拝領地の町屋敷化を認めざるをえなかった。この拝領主たちは事実上,店賃をあてにする都市下層民と化していたが,その町屋敷に居住したのは日雇稼ぎ,棒手振(ぼてふり),職人手間取りなどが多く,なかには乞胸(ごうむね)といった困民化した者もいた。拝領町屋敷であった下谷の山崎町,鮫河橋(さめがはし)谷町などは下層民が集住した所であった。
執筆者:松本 四郎
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報