改訂新版 世界大百科事典 「排臨」の意味・わかりやすい解説
排臨 (はいりん)
apearing
分娩の進行につれて胎児は産道(子宮頸管ならびに腟)をしだいに下降し,骨盤底に到達し,産道の出口部に見え隠れするようになる。このころになると,陣痛発作(子宮収縮)時には腟口から胎児の最も先進している部分が膨隆して見え,陣痛が休止している間欠時には引き込んで見えなくなる状態になる。この状態を排臨という。経産婦ではこの状態の期間は短く,まもなく胎児は娩出されるが,初産婦では外陰とくに会陰の筋肉および皮膚の抵抗が大きいために時間がかかる。この時期を過ぎて,胎児が腟口に露出し,陣痛間欠時にも引き込まなくなった状態を発露(はつろ)といい,まもなく胎児は娩出されるが,排臨から発露にかけては陣痛が著しく,会陰の伸展も高度となるため,産婦の苦痛は頂点に達する。一方,胎児は長時間の分娩経過を経て,娩出直前に強い圧迫を受ける時期なので,この時期が長引くと低酸素状態となり,胎児仮死という状態になりやすい。
→出産
執筆者:岩崎 寛和
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報