本来は分娩中の子宮収縮のことをいう。しかし妊娠中にも不規則で弱い子宮収縮が起こるので,これを分娩時の分娩陣痛に対して妊娠陣痛pregnant painsまたは偽陣痛false painsといい,分娩終了後の陣痛を後陣痛after painsという。分娩陣痛labor painsは分娩の進行とともにしだいに強くなる規則正しい子宮収縮によって起こるもので,はじめは1時間に6回くらいの頻度(周期10分)で収縮の持続時間(発作)は20~30秒くらいであるが,胎児娩出に近づくにつれて,周期は2~3分,発作は60~120秒くらいとなり,しかも収縮力が強まると同時に,いきみ(腹圧)が自然に加わるようになると,これを共圧陣痛という。微弱陣痛では子宮収縮剤を投与しないと分娩が長引いて胎児が弱る。一方,過強陣痛では産婦は疼痛に苦しみ,急速分娩や子宮破裂などの危険が大きい。
陣痛は上述のように子宮収縮のことであるが,分娩時には強い収縮力と産道の開大に伴う痛みを生ずる。英語でも疼痛と同じpainsが用いられる。したがって,分娩開始時の子宮収縮を産婦はそれまでの偽陣痛とは異なる性格のものと自覚するのがふつうであるが,神経質な産婦は偽陣痛をもって分娩開始と誤ることがある。
→異常分娩
執筆者:岩崎 寛和
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分娩(ぶんべん)時に周期的、波状的に反復しておこる子宮の収縮をいう。子宮腔(くう)を囲む子宮体部の壁は左右から斜方向に走る筋肉線維(外縦走筋と内輪走筋)からなり、この筋全体が収縮するのが陣痛発作であり、弛緩(しかん)している間を間欠という。多くは不随意的におこり、痛みを伴うが、この痛みを産痛という。
陣痛の異常には微弱陣痛、過強陣痛、けいれん陣痛などがある。陣痛は精神作用や薬物的刺激などで増強させたり減弱させたりできる。妊娠末期に薬物で子宮収縮をおこして分娩を誘発する陣痛誘発法や無痛分娩などに応用される。
陣痛の強さは子宮内圧によって表され、その計測には陣痛計が使われ、よく用いられるのは測定器を妊婦の腹壁など体表面に装置して子宮収縮を記録する陣痛外測計で、ほかにいろいろな型がある。陣痛発作の回数、強度、収縮時間などを測定して分娩進行の指標とするが、とくに陣痛計を組み合わせた陣痛胎児心拍数計は、分娩監視装置とよばれる。
[新井正夫]
出典 ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典について 情報
出典 母子衛生研究会「赤ちゃん&子育てインフォ」指導/妊娠編:中林正雄(母子愛育会総合母子保健センター所長)、子育て編:渡辺博(帝京大学医学部附属溝口病院小児科科長)妊娠・子育て用語辞典について 情報
…分娩(出産)の経過が正常の経過をたどらず,通常の場合以上の人工介助を必要としたり,母体や胎児に傷害を生ずるような分娩をいう。娩出力(陣痛,腹圧),娩出物(胎児および付属物),産道(骨産道,軟産道)の三つを分娩の3要素といい,それらがいずれも正常で,しかも釣合いがとれている場合には分娩は正常の経過をとる。したがって,そのうちのどれかに異常があればすべて異常分娩となるわけであるが,それにも程度があって,多少の異常があっても釣合いのとれた範囲であり,結果的に母子に異常なく安全に分娩が終了すれば異常分娩とはよばない。…
…とくに閉塞にさからって内容を送り出そうとする収縮は強い痛みを起こす。子宮も同様で,焼いても切っても痛くないが,分娩時には強く収縮して頸管を広げるので陣痛が起こる。
[痛みの受容器]
痛みを起こす刺激はAδ繊維やC繊維の興奮を起こす。…
…頸管および腟にはひだがあり,開大しやすい構造になっている。
[娩出力]
娩出力には子宮収縮すなわち陣痛と腹圧とがある。分娩時の子宮収縮を分娩陣痛または単に陣痛labor painsというが,子宮収縮そのものは非妊時にも妊娠中にもみられる。…
…骨盤内臓神経に含まれる副交感神経系求心性要素をなすものは,脊髄の第2~4仙髄の高さの脊髄神経節の内部に細胞体を有し,末梢側突起(知覚性軸索)を骨盤内の臓器にまで伸ばし,中枢側突起を仙髄に進入させているような知覚性ニューロンである。この種のニューロンが伝える骨盤内臓器からの刺激には,膀胱壁伸展度を伝える機械刺激(尿意),妊娠子宮壁の収縮度を伝える機械刺激(陣痛)など,意識にのぼるものが少なくない。このような求心性刺激に応じた内臓反射も引き起こされるのであるが,その際に正常状態下では,ある程度までは内臓反射(排尿や分娩)の発現が大脳皮質による意志の統制下に置かれ,場所や状況が適当であるか否かの判断がからむ点が特異である。…
※「陣痛」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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