…この時代の《仙伝抄》《君台観左右帳記(くんだいかんそうちようき)》《御飾記(おかざりき)》などの棚飾図中にも描かれ,その実体が知られる(座敷飾)。 なお重箱の一種の提重(さげじゆう)は,花見遊山など外での酒宴等に便利なように,携帯用重箱として工夫されたものである。組重箱をそのまま手提台にのせ,さげるようにした簡単なものと,提鐶(さげわ)のついた枠型の中に重箱,銀あるいは錫製の酒瓶,杯,銘々皿などを一具として組み入れたものがある。…
…【坪井 洋文】
[弁当箱]
神沢杜口(かんざわとこう)の《翁草(おきなぐさ)》(1791)に,弁当箱は信長の安土時代にできたもので,〈小さき内に諸道具をさまると云,偽ならんとて信ぜぬ者も有しとぞ〉としている。諸道具の範囲がはっきりしないが,いろいろの器を納めたとすれば,食器や酒器までを組み込んだ提重(さげじゆう)の小型のようなものだったかもしれない。だいたい弁当という語が〈割りあてる〉の意であるから,古く野外の食事や贈物をする際に器物や食物を納めて運んだ行器(ほかい)などに由来すると思われ,《多聞院日記》天正19年(1591)10月26日条などにそうした用例が見られる。…
※「提げ重」について言及している用語解説の一部を掲載しています。
出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」
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