表向き(読み)オモテムキ

デジタル大辞泉 「表向き」の意味・読み・例文・類語

おもて‐むき【表向き】

内実とは違った、世間に対する名目。うわべ。表面上。副詞的にも用いる。「表向き理由」「表向き出張ということにしておく」
表立つこと。表ざた。「この話は表向きにしないでもらいたい」
政府役所などの公的な機関。また、そこで扱う事柄。特に、訴訟。「表向きに申し出る」
幕府や藩で政治をつかさどる所。また、その方面仕事。⇔奥向き
店の仕事。家業
よろづにかしこき人もがな、跡を預けて、―をさばかせ」〈浮・五人女・三〉
[類語]名目口実隠れみの仮託かこつける託するよそえる盾に取る表看板美名綺麗事大義大義名分錦の御旗公然おおっぴらオープン筒抜け上面皮相上辺表面外面的平面的化けの皮外見がいけん外見そとみ外面がいめん外面そとづら見掛け外観みてくれ見た目見栄えなりふり体良く空空しい白白しいわざとらしい心にもない受け流す取り繕う繕う猫をかぶる見せかけ表面的薄っぺら浅薄あさはか名目的

出典 小学館デジタル大辞泉について 情報 | 凡例

精選版 日本国語大辞典 「表向き」の意味・読み・例文・類語

おもて‐むき【表向・面向】

  1. 〘 名詞 〙
  2. 表立つこと。公然たること。正式なこと。おおやけ
    1. [初出の実例]「名乗に判をするは、名字を二つかいたるもの也。判をせは名乗を略し、名乗をかかは判を略すへし。面向のものは、今も如此かく也」(出典:清原宣賢式目抄(1534)二六条)
    2. 「真夫(まぶ)〈略〉表向の買手にあらずして、密通する男をいふ」(出典:評判記・色道大鏡(1678)一)
  3. ( 副詞的にも用いられる ) 世間に対すること。世間体(せけんてい)。うわべ。表面上のこと。〔日葡辞書(1603‐04)〕
    1. [初出の実例]「おもてむきばかり義理だてをして、心には財宝利欲立身のみむさぶりぬるを下とす」(出典:翁問答(1650)上)
  4. 公務。特に、江戸幕府や諸藩の政務をとる所。また、その仕事の方面。⇔奥向(おくむき)勝手向(かってむき)
    1. [初出の実例]「惣じて大名は面(オモテ)むきの御勤めしげく」(出典:浮世草子・好色一代女(1686)一)
  5. 公的な事柄や機関。官辺。そのすじ。また、それにかかわる事態。特に裁判沙汰。訴訟。公事(くじ)
    1. [初出の実例]「或時町内檜物屋へ壱貫五百匁の預け銀不埒につき、『近日表向(オモテムキ)へおねがひ申』とのとどけによって」(出典:浮世草子・世間娘容気(1717)一)
  6. 家業。また、店、店構え。
    1. [初出の実例]「万(よろづ)にかしこき人もがな跡を預けて表(オモテ)むきをさばかせ」(出典:浮世草子・好色五人女(1686)三)
  7. 家の正面にあたる方向。その家の正式の場所。また、表玄関
    1. [初出の実例]「昔は書院おもてむきの座敷にはすみを立て置なり」(出典:酌并記(1532‐70頃))

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