改訂新版 世界大百科事典 「支出税」の意味・わかりやすい解説
支出税 (ししゅつぜい)
expenditure tax
支出税は,個々の家計の消費支出水準を課税標準tax baseとして課税するもので,直接税の一種である。具体的には,家計の申告する消費支出に対して比例的な税率あるいは累進的な税率が適用され,個々の家計の税負担額が決定される。支出税は,これまで現実にはほとんど採用されたことのない税制である。しかし,J.S.ミル,A.マーシャル,I.フィッシャー,N.カルドアらの著名な経済学者によって,古くから提唱されており,最近においてもそれを支持する論調が英米を中心にして高まっている。支出税を支持する主要な論拠は次のとおりである。第1に,所得税が所得稼得の段階とその一部を貯蓄して利子所得が発生する段階において二重課税するのに対し,消費される段階でのみ課税する支出税は二重課税を生じない。第2に,所得税は同じ所得を稼得する家計でも貯蓄水準の高いほど多くの税負担を強いることになるが,支出税はそのような水平的な不公平を生み出さない。第3に,支出税は所得税よりも貯蓄を増大させる効果をもち,資本不足を解消するのに役立つ。
執筆者:本間 正明
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報