日本大百科全書(ニッポニカ) 「支婁迦讖」の意味・わかりやすい解説
支婁迦讖
しるかせん
生没年不詳。アフガニスタン北部よりガンダーラ方面を支配した大月氏(だいげっし)国出身の仏典翻訳者。原名はローカクシェーマLokakema。支讖と簡称する。漢の桓帝(かんてい)末に洛陽(らくよう)にきて、霊帝(れいてい)(在位168~189)の光和・中平年間(178~189)に『道行般若経(どうぎょうはんにゃきょう)』『首楞厳経(しゅりょうごんきょう)』『般舟三昧経(はんじゅざんまいきょう)』などを漢訳した。『道行般若経』は魏晋(ぎしん)の玄談(げんだん)(哲学的問題を論じたもの)にも影響を与え、とくに重要である。また、『般舟三昧経』は阿弥陀仏(あみだぶつ)を中国に紹介した経典として有名である。安世高(あんせいこう)と並び、最古の仏典漢訳者としてたたえられる。『出三蔵記集』によれば、訳経は13部27巻に及び、すべて大乗経典である。
[丘山 新 2017年2月16日]