日本国国憲按(読み)にほんこくこっけんあん

日本大百科全書(ニッポニカ) 「日本国国憲按」の意味・わかりやすい解説

日本国国憲按
にほんこくこっけんあん

明治前期、植木枝盛(うえきえもり)が起草した憲法案。「東洋大日本国国憲按」ともいう。明治10年代には自由民権派を中心に多数の憲法草案が作成されたが、これは植木が立志社の憲法草案として1881年(明治14)8月以後に起草したもの。18編、附則あわせ220条に及び、明治前期の私擬憲法で現存するもののなかではもっとも長文である。その特色は、三十数条にわたる詳細にして徹底した人権保障規定にあり、抵抗権、革命権も認めている。そのほか連邦制、地方(州)自治、土地国有などの規定を含め、現存する私擬憲法中もっとも民主主義的なものとみられる。第二次世界大戦後の日本国憲法に影響を与えた。

[松永昌三]

『家永三郎・松永昌三・江村栄一編『明治前期の憲法構想』(1967・福村出版)』『家永三郎編『植木枝盛選集』(岩波文庫)』

出典 小学館 日本大百科全書(ニッポニカ)日本大百科全書(ニッポニカ)について 情報 | 凡例

世界大百科事典(旧版)内の日本国国憲按の言及

【基本的人権】より

…自由民権運動のなかで,民選議会開設の要求とならんで,どんなに人権保障の要求が強かったかは,明治10年代につくられた民間の憲法草案(私擬憲法)にあらわれている。特異な例であるが植木枝盛の作成した〈日本国国憲按〉(1881)には,人民の自由権利を制限する立法の禁止,思想の自由,教授の自由,歩行の自由,拷問の禁止,死刑の廃止,無法に抵抗する権利など斬新な内容の人権規定が多く含まれている。国民のあいだにみられた人権要求は大日本帝国憲法(1889公布)には十分反映されなかった。…

※「日本国国憲按」について言及している用語解説の一部を掲載しています。

出典|株式会社平凡社「世界大百科事典(旧版)」

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