国指定史跡ガイド 「旧名手宿本陣」の解説
きゅうなてじゅくほんじん【旧名手宿本陣】
和歌山県紀の川市名手市場にある本陣跡。紀ノ川中流域の右岸にある河岸段丘上に所在。1630年(寛永7)から名手地域の大庄屋を務めた地士頭妹背(いもせ)家の邸宅。大和街道に面していたため参勤交代時の本陣として名手本陣と称され、華岡青洲夫人加恵の実家としても知られる。現在の本陣は1714年(正徳4)の火災の後に再建されたもので、東西約40m、南北約80mの矩形(くけい)の敷地周囲に築地塀をめぐらし、御成門・通用門・主屋・蔵などを構え、主屋は南面に玄関・式台、奥に店の間・取次の間・台所、さらに御殿にあたる上段の間・次の間などを配する。蔵は主屋の西に2つあり、それぞれ寛永年間(1624~44年)の棟札があることから、正徳の火災に焼け残ったとも考えられる。主屋の北に、築地の仕切り塀をへだてて2棟の役所がある。奉行組同心の詰め所と物置で、妹背家が地士頭の扱いをうけていたため、同心が駐在したものといわれている。本陣・役所の建物の来歴が明らかであり、本陣・地士・大庄屋を兼ねた総体の構えをよく遺存していることから、1970年(昭和45)に国の史跡に指定された。その後、土塀と御成門の整備が実施された。JR和歌山線名手駅から徒歩約5分。