時に佇つ(読み)トキニタツ

デジタル大辞泉 「時に佇つ」の意味・読み・例文・類語

ときにたつ【時に佇つ】

佐多稲子による自伝的連作短編集。昭和50年(1975)「文芸」誌で連載。全12編の11編目が同年の第3回川端康成文学賞受賞単行本は翌年刊行。

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日本大百科全書(ニッポニカ) 「時に佇つ」の意味・わかりやすい解説

時に佇つ
ときにたつ

佐多稲子(さたいねこ)の短編連作集。1975年(昭和50)『文芸』1~12月号に連載。76年河出書房新社刊。同年6月『時に佇つ(その一一)』で川端康成(かわばたやすなり)文学賞を受賞。長い間、政治活動に参加し、心労多く71歳まで生きてきた「『私』の過去にあったことが、再(ふたた)び、今自分に結びついてきたことに『時』というモチーフを得て」これらの12の短編が書かれた。とくに、(その一一)は、20年人生をともにし、別れて後30年になる夫の死が報じられて、自然に導かれていく境地がくまなく描写される。そこには人と人との機縁によってつくられていく人生の奥行がみごとに映し出され、作者の到達しえた人生認識が伝えられる。

[岡 宣子]

『『時に佇つ』(河出文庫)』

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