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佐多稲子 さたいねこ

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ブリタニカ国際大百科事典 小項目事典の解説

佐多稲子
さたいねこ

[生]1904.6.1. 長崎
[没]1998.10.12. 東京
小説家。本名,佐田イネ。 18歳の中学生と 15歳の女学生の恋愛の結果として生まれ,母の死後上京 (1915) ,父の失職などの事情で小学校5年からキャラメル工場に勤め,以後,中華そば屋,料亭,メリヤス工場などを転々とした。

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朝日新聞掲載「キーワード」の解説

佐多稲子

昭和を代表する女性作家のひとり。長崎市生まれ。生活は貧しく、小学校を中退した。「キャラメル工場から」で1928年にプロレタリア作家として出発。戦中の行動を批判され、戦後の新日本文学会立ち上げ発起人にはなれなかった。戦後は自らの内面を掘り下げる作品を発表するかたわら、「婦人民主クラブ」の委員長を長年務めるなど女性運動の一翼も担った。

(2013-01-16 朝日新聞 朝刊 長崎全県 2地方)

出典|朝日新聞掲載「キーワード」
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デジタル大辞泉の解説

さた‐いねこ【佐多稲子】

[1904~1998]小説家。長崎の生まれ。本名、イネ。「キャラメル工場から」でデビュー。左翼運動に身を投じ、共産党に入党するが、のち除名。他に「女の宿」「樹影」「時に佇(た)つ」「月の宴」など。

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百科事典マイペディアの解説

佐多稲子【さたいねこ】

小説家。長崎県生れ。本名佐田イネ。一家の上京後,家計の窮乏によって働きに出たカフェー〈紅緑〉で中野重治ら《驢馬》同人と知り合う。やがて同人の一人窪川鶴次郎と結婚。
→関連項目壺井栄

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デジタル版 日本人名大辞典+Plusの解説

佐多稲子 さた-いねこ

1904-1998 昭和-平成時代の小説家。
明治37年9月25日生まれ。一家で生地長崎から上京。「驢馬」同人の中野重治,窪川(くぼかわ)鶴次郎とであって文学にめざめ,窪川と結婚(のち離婚)。昭和3年「キヤラメル工場から」を発表。7年共産党にはいり,戦後離党。それらの体験を作品化しつづけ,47年長崎で被爆した友人の画家の死と中国人女性との恋愛をえがいた「樹影」で野間文芸賞,51年「時に佇(た)つ」で川端康成文学賞,61年「月の宴」で読売文学賞をうけた。平成10年10月12日死去。94歳。本名は佐田イネ。作品はほかに「私の東京地図」「くれなゐ」など。

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大辞林 第三版の解説

さたいねこ【佐多稲子】

1904~1998) 小説家。本名佐田イネ。長崎県生まれ。「キャラメル工場から」でプロレタリア作家として出発、転向後は夫婦生活の危機を「くれなゐ」などに描き、戦後も持続的に戦前、戦中の過去を「私の東京地図」などで描き続ける。著「樹影」「時に佇つ」「夏の栞」など。

出典|三省堂
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日本大百科全書(ニッポニカ)の解説

佐多稲子
さたいねこ
(1904―1998)

小説家。明治37年6月1日、長崎市に生まれる。本名イネ。まだ中学生であった田島正文と女学生の高柳ユキとの間に生まれたため複雑な経緯を経て、5歳のとき実父母の籍に養女として入籍。1915年(大正4)父の三菱(みつびし)造船所退職に伴い一家で上京。由緒ある家系の田島家であったが、たび重なる父の蹉跌(さてつ)により貧窮のどん底に陥る。稲子も向島(むこうじま)牛島小学校を中退してキャラメル工場で働く。以後、料亭の女中、丸善の店員などを経験する。急激な境遇の変転と、最初の結婚・離婚の辛苦のため、一時厭世(えんせい)的になるが、女給として勤めた本郷のカフェー「紅緑」で『驢馬(ろば)』の同人中野重治(しげはる)、堀辰雄(たつお)らと知り合い、人生・文学両面に開眼させられる。その後、同人の一人窪川鶴次郎(くぼかわつるじろう)と結婚。左翼運動に身を投じて、検挙の非道さを体験する。28年(昭和3)『キャラメル工場から』を発表、作家生活に入る。32年共産党に入党。日本プロレタリア作家同盟婦人委員として活躍をするが、41年以降は、戦時下の国家体制のもとで思想的に後退、結婚生活にも破綻(はたん)をきたす。戦後の64年(昭和39)、共産党の思想・政治的方針を批判して除名される。この事件により、長い間絡んでいた党の政治的認識や党派的な偏見などに対する複雑な思いから完全に解放されたことを自覚する。戦後の創立時からリーダーを務めた「婦人民主クラブ」の活動を一貫して続け、1970年から85年までは委員長を務めた。『女の宿』(1963)で女流文学賞、『樹影(じゅえい)』(1970~72)で野間文芸賞、『時に佇(た)つ』(1975)で川端康成(やすなり)賞を受賞。ほかに『くれなゐ』(1936~38)、『素足の娘』(1940)、『私の東京地図』(1946~48)、『歯車』(1958~59)、『灰色の午後』(1959~60)、『渓流』(1963)、中野重治の追想記『夏の栞(しおり)』(1982)などがある。[岡 宣子]
『『佐多稲子全集』全18巻(1977~79・講談社)』

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世界大百科事典内の佐多稲子の言及

【くれなゐ】より

…佐多稲子(1904‐ )の中編小説。1936年(昭和11)1~5月の《婦人公論》に連載,最終回〈晩夏〉は38年8月の《中央公論》に発表。…

【原爆文学】より

…第3は,原爆がもたらした悲劇を庶民の日常生活をとおして書き,文学史に残る傑作と称される井伏鱒二の《黒い雨》(1965‐66)のように,被爆者ではないが,広島,長崎と出会った良心的な文学者たちによって,さまざまな視点から広島,長崎,原水爆,核時代がもたらす諸問題と人間とのかかわりを主題とする作品が書かれた。作品に佐多稲子《樹影》(1970‐72),いいだもも《アメリカの英雄》(1965),堀田善衛《審判》(1960‐63),福永武彦《死の島》(1966‐71),井上光晴《地の群れ》(1963),《明日》,高橋和巳《憂鬱なる党派》(1965),小田実《HIROSHIMA》(1981)などがある。なかでも特筆すべきは大江健三郎(1935‐ )の存在で,1963年に広島に行き《ヒロシマ・ノート》(1964‐65)を発表して以来,〈核時代に人間らしく生きることは,核兵器と,それが文明にもたらしている,すべての狂気について,可能なかぎり確実な想像力をそなえて生きることである〉とする核時代の想像力論を唱え,《洪水はわが魂に及び》(1973),《ピンチランナー調書》(1976),《同時代ゲーム》(1979),《“雨の木(レインツリー)”を聴く女たち》(1982)などの作品を書き,国内だけでなく外国でも高く評価された。…

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