弦楽器を曲芸的に弾くこと。楽器の取扱い方が尋常でないものと、演奏そのものが普通でないものの2通りある。前者は、三味線などを頭上で弾くとか、演奏中に回転させるとか、勘どころを押さえる人と弾く人が別々とか、あるいは撥(ばち)を放り投げるとかいったもの。後者は、リズムやテンポを通常でなく演奏するものである。江戸の鳥羽屋三右衛門(とばやさんえもん)(1712―67)が、三味線を弾きながら同時に太鼓と鉦(かね)を打って「曲を尽せり」と『歌舞伎事始(かぶきことはじめ)』にある。今日でも文楽のなかに前者の奏法が伝えられているし、九州の盲僧琵琶(びわ)にもある。後者の伝統は、長唄(ながうた)の長い合の手や大薩摩(おおざつま)の合の手にも聞くことができる。
[織田紘二]
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