改訂新版 世界大百科事典 「最適化手法」の意味・わかりやすい解説
最適化手法 (さいてきかしゅほう)
optimization techniques
最適化という考え方は現代を象徴する一つの方向であり,例えば最適制御,最適設計,最適在庫,最適流通網などのように使われている。最適化手法はこういった現実問題を解くために作られた手法の総称であるが,数学的な表現としては極値問題に帰着する場合が多い。最も簡単なケースでは,一変数関係f(x)の極値を求める問題となり,f′(x)=0を満たす根を求めることが必要となる。また導関数や微係数を用いないで極値を求める方法として,黄金分割法や二次補間法がある。多変数関数f(x1,x2,……,xn)の極値を求める方法としては共役こう配法や準ニュートン法が用いられる。これらの方法はいずれも逐次近似解法であるが,関数fが二次式の場合には,有限回の反復の後に極値に収束することが理論的に保証されている。さらに制約条件が付加された場合には,線形計画法や非線形計画法が用いられる。また,多段階にわたる決定問題を対象とする最適化手法として動的計画法がある。
最適化手法は普通,現実問題の数学的模型に対して適用されるもので,現実問題それ自体を解いているのではない点に注意しなければならない。その意味では数式化の部分は最も重要であり,現実問題の構造を的確に抽象化したものでなければならない。しかも,使用するコンピューターの能力内に収まる程度の大きさでなければならない。問題によっては最適解そのものを求めることがきわめて多量の計算を要する場合もあり,そのときは準最適解で満足しなければならない。また,問題を取りまく環境条件の変化に対して最適解がどのように変化するかを調べる必要が起こることもある。そのような手順を一般に感度分析sensitivity analysisという。線形計画法や二次計画法の場合,感度分析の手法は確立している。
最適化手法が研究対象として本格的に取り上げられたのは1940年代の後半以降であり,線形計画法の成功は大きな拍車となった。研究者数も着実に増加しており,アルゴリズムの開発,数学的基礎理論の確立,コンピューターソフトウェアの作成,実際的問題への適用といった具合に研究の領域も拡大してきている。
執筆者:刀根 薫
出典 株式会社平凡社「改訂新版 世界大百科事典」改訂新版 世界大百科事典について 情報